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simple is the best!


::奇妙主とトレーナーとふしぎなアメ

 ○のトレーナーとなった男は、実に淡白な性質をしていた。
 毎朝同じ時間に目を覚まし、朝昼晩、決まった時間に食事をする。彼にとって、日々の生活とは、同じリズムを繰り返すことにある。デジャヴを感じる。
 そして無論、彼は○にもそれを強要する。

 ○は毎日、変わり映えのない生活を送っていた。○に言うことを聞かせることを諦めた彼は、○に学習装置を持たせたままバトルに臨む。それから食事の時には、リゾチウムとインドメタシンを少し。
 しかし、時々には違う事もある。

 ポケモンの食べる物の中で一番美味しいのは、何と言ってもふしぎなアメだった。
 元から、○は甘いものには目がなかった。しかし、ふしぎなアメの美味しさときたら。どういう理屈か食べるだけでレベルが上がるこの飴は、バトルを拒否り続ける立場としても進んで食べたい代物だ。
 ○のトレーナーは、時々この飴をくれることがある。ほんの時々、ごく稀にだ。ゲームの中でもなかなか手に入らなかったこれは、多分に希少価値が高いのだろう。
 トレーナーは最初、バトルをせずに飴を強請る○を見て、「図々しい奴だ」とか何とか言っていたが、あまりに喜ぶものだから、考えを変えたようだった。
「お前、飴欲しさに俺の指示を受けぬのではないだろうな」
 胡散臭そうに呟く彼に、内心でそんなまさかと返す。コロコロと口の中で転がる飴は、最高に美味しかった。あ、レベル上がった。

 ○としてはこのトレーナーがもう少し手持ちに優しくなって、毎日のようにふしぎなアメを与えてくれるのを期待している。
 

2013.06.07 (Fri) 23:06
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