「安心しなよ…◇」 頬杖をついたヒソカがくすり、と笑って瞳を細める。その一言で、心にかかっている雲の正体を見破られていたことに気付く。 カンナのこととなれば、いつもの自分ではなくなっていた。それはきっと、まだカンナが結論を出してくれないからだろう。もう、待つと言ってから一週間が経つ。自分から待つと言った以上は、こちらから結論をせかすことはできない。きっとその焦りと苛立ちが無意識のうちに滲み出ていたのかも知れない。普通の人間なら見破ることはできないだろうが、この男の野生並みの第六感には探られてしまったらしい。 「彼女は姉をわざわざ殺しに行こうだなんて思ってない。もしばったり出会ってしまえば殺そうとするかも知れないけど。その時も、団員の中に彼女に応戦しようだなんてヤツはいない。アンナはプライドが高いから」 「ご主人さまも?」 「クロロはきっと止めるだろうね」 「恋人の敵なのに?」 「憶測だけどクロロはカンナちゃんを敵だとは思ってない」 「ふうん」 そうそう、と思いついたようにカップの珈琲を飲み干して、立ち上がる。今から仕事があるのを忘れていたと言うヒソカは、妖しく瞳を細めて携帯のディスプレイを軽く見つめ、こちらをちらりと見る。 「今晩、彼女も参加の仕事があるらしい。見に来るかい?」 「また急な話だね」 「今から出発すれば間に合う」 答えは聞かなくてもわかるだろう、と立ち上がる。なんとなく、少し冷静さを取り戻してきていた。 「ヒソカも参加するの?」 「ああ、彼女が来るのは珍しいからね。クロロが来る確立も高くなる。近くの国だから都合もいい」 きっと楽しい夜になる。そう笑うヒソカを見て、つくづくこの男は狂っていると思った。 ×
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