言ってしまえば、壊れてしまう。いままで、成り立っていた家族としての在り方も。お母さんやお父さんはなんて思うんだろう。イル兄は、長男だ。お母さんはヒステリックを起こして、私達をバラバラに引き離してしまうかもしれない。 ーーーあぁ、 そうやって貴方は 私の世界を壊す。 こっちは冷静に、平気な素振りをしていたいのに。普通の兄と妹に戻りたいと、願っているだけなのに。手の中に握っているコップを、するり、といつの間にか落とされるような。そんな感覚で、私の世界を壊す。 「違うんだ、根本的に」 『違う?』 「そう。全て違うんだ」 『違わない、よ』 それでも、私の世界を壊そうとする彼を、私は決して責めることはできない。 「カンナ」 『…っ、…』 「逃げないで、ちゃんと見て、ちゃんと感じて、」 取られた手は、指先をイル兄の頬に触れらされる。 「オレは男だよ」 手が、動かない。 イル兄の顔が、身体がゆっくりと近付いてきているのに私の手足は硬直したまま動かない。彼の頬に触れた指先が微かに震え、引くことができない。この男は私の兄なんだ、と思い込む事が出来ない。 「カンナが、オレのことを全く好きになれなくて、絶対に無理なら仕方がない」 『……わ…たし…』 「でも……、」 『……』 「オレが兄貴だから。って理由でダメなら、オレは、」 ぎゅっ、と力を込められた。私はただ、自分が今どんな顔をしているのか怖くて、じっと俯いて地面を見つめる。 「オレは、オレ達が、兄妹だってこと、本気で悔やむ」 ーーーー消えそうな声でそう呟いた君が、とても辛そうで。とても弱々しく見えた。 |