しばらくその幼稚な行為を続けていると、ズボンで携帯が震えた。無視してやろうとするも、やかましく鳴り続けられるとそうにもいかない。 PiPiPi──… 唇を離し、ポケットで震え続ける携帯に、少し苛つきながら電話に出る。 「……はい、」 『…、…っ、』 「カンナならいるよ。うん、いまから帰る所。…はは、母さんは心配症だな」 『……いる、…に…っ、』 「すぐ戻るよ」 携帯を切れば、顔を真っ赤にしたカンナが不安そうな瞳でこちらを見つめてくる。目尻に残った涙に唇を落としてやると。 『……、…!』 「さあ、帰ろうか」 こくん、と頷くカンナの頬を撫でて、前髪に唇を落とす。 母さんに知られることを恐れているのだろうか。ヒステリックを起こして、大変だろうな。 だけど本当に問題なのは親父の方だろう。なぜかカンナにかなり入れ込んでいる。なんでも不自由なく暮らせるように、母さん以上に甘やかしてる。 見方につければかなり心強いが、敵となればかなり手強い。 カンナがオレと同じ気持ちになって、求めてくれるようになれば、きっと親父も見方についてくれるだろう。なかなか、長丁場になりそうだ。 END |