「カンナ、」 『……』 「──…カンナ」 はっとして、カンナは俯いていた顔を上げる。キキョウは不思議そうに彼女の顔を覗きこんでいた。 「どうしたの?」 『なんでもない。ただぼーっとしてただけ』 ならいいけれど、と笑うキキョウにカンナも笑いかけた。 目が覚めると自分の部屋のベッドの上だった。昨日の出来事が夢なのか現実なのかわからなかった。なんにせよ、今の自分がイルミに会って平常心でいれる自信はなかった。 「それでね話しの続きなんだけど、この前お取り寄せしたケーキがとっても美味しくてね」 『へぇ、いいなあ』 「でしょう!カンナの為に早速取り寄せるわ!」 もう一つ、気にかかっていることがある。よく見る夢が最近、嫌にリアルになっていることだ。 「…やっぱり元気がないようね。カンナ、気晴らしに森の空気でも吸ってきたら?久しぶりにミケにも会うのも気分転換になるかも知れないし」 『本当になんでもないの。心配しないでね』 「なにか合ったら言いなさい。パパもママもカンナの味方だから」 『…ありがと、』 ───…綺麗な女の人と男の人が床に転がっていて、夢の中の私はなぜかその二人を父様母様≠ニ呼んでいる。最後は私も倒れるが、誰かに連れ去られ、そこで夢が終わる。初めは二人の顔や、私に話しかけてくる影もぼんやりとしたものだったが、最近は大分はっきりとしてきた。なんてことない夢なのかも知れないが、嫌な予感がしてならかなかった。 END ×
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