『……ふぅ』 変わらない部屋 私が覚えてないだけかも知れないけれど。協会の借宿と比べてしまうからか、何故か部屋が随分と広く見える。掃除はされているけど、部屋の家具自体は変化ない。 「終わった?」 『ィ、‥ル…兄…』 「本当、母さんも父さんもカンナに甘いよね」 突然の侵入。驚きと恐怖に被られようとしている私を他所に、机に置いてあったメモ帳とペンを取って何やらサラサラと書き始めた。嫌な予感がする。 「そんなに警戒しなくても何もしないよ。俺も怒ってるワケじゃない」 ここ盗聴機ついてる 顔の前に出された一枚の紙が私の心臓をドキリ、と貫く。ショックは無いが下手に話せない緊張感が追いやる。この会話も全て管理されている(一歩間違えれば地雷じゃ済まない) 『ッ────…』 「じゃあ、独房に行ってくる」 明日出掛けよう イル兄は紙を持ったまま部屋を出る。何も出来ない私は只、立ち伏せたまま床を見る。酷く鼓膜を燻る耳鳴りがする 私が望んだ世界は、なんだったのだろうか。鮮やかな色彩は(心の)フィルターを通して灰色に変わる。 |