白翼長編 | ナノ







PiPi───…


錯乱し意識の薄れた頭に小さなアラーム音が響き渡る。彼女は何か楽しげに呟いていたけれど今の私には何も聞こえないようだ。痛みが意識にノイズを掛ける。会話の意図は掴めない。





「よく一分間無口に頑張ったね、お疲れ様」






彼女の声は私の声。誰かの歩く振動が床を伝い私の鼓膜に知らせる。まるで私が私をいたぶっていたような不思議な感覚。まだ1分しか立って居なかったのか、60秒という短い時間に20ヶ所程あの小さなナイフで刺された。





「うお、ヒデェな」





滅多刺しにされた両腕にはもはや感覚はなく、動けない時間は永遠のように流れる。ひび割れた仮面の隙間から彼女の指先に小さな球体が見えた。球体は光を発しながらどんどん大きくなり、中心は闇に染まっていった。





「ッ────…」

「………」

「おしっ、完了ッ!」





黄金に光っていた筈が、今では闇に飲み込まれ漆黒の妖しい光を放っている。彼女は手の平に浮かべた球体を扉に押し付けた。絶対に開く事のない扉は一瞬にして吸い込まれるように消えた。早速彼女の仲間らしき人物が扉の奥の王冠や宝石を袋に詰めていく


そこで意識は途絶えた







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