「なんだこれはー!!!!」

絹を裂く様な…神の悲鳴。
どうも、神です。


気の遠くなるほどの年月、魔王の手によってコールドスリープに掛けられていたらしい俺(神)は、つい先日覚醒した。
つい先日というか、ついさっき。

そして今、ここフィルモアを魔のものから救い出さんと、ガチムチした鎧を纏った銅像の中に入り、奮闘しているわけだ。


にしても、魔王の力は思った以上に強大だった。一度は俺を封印したというだけのことはある。それを自力で(おそらく)打破した俺はもっと凄いが。

だから、俺がこんな魔王の眷属…それも下っ端に、苦戦させられるはずがない。
はずが…。


「ふぎゃーぁあああ!」



「… 神さま、思ったより早かったですね」
「何も言うなエンジェルよ…」
「これでは魔王討伐もいつになることやら」

入っていた銅像を破壊されたらしい俺は、いつの間にかエンジェル(全裸幼児)の居る天空城に戻っていた。
全く便利なことだ。

「だってあの紫のがやたらトリッキーな動きしてるんだよ!」
「そうでしたら神さまもトリッキーな動きで避けたらよろしいでしょう」

全裸幼児(エンジェル)は冷めた目でそう言った。

「大体、いかにも砕けます、って銅像に入るほうがおかしいんだ!もっとなんかないの?!」

俺は切実な訴えを叫ぶ。諸行無常な物質に入るのではなく、実体のない(多分俺には実体がない。何にでも姿を変えることができる。だがスタンダードな表象は、およそ成人男性と呼ばれるものだ。まぁ自分を模して人間(♂)を造ったんだから当たり前だが。その話はおいおいに)俺自身がぱーっと魔物を蹴散らして行けばいいのでは。

「無理ですね」
「なんで!」
「もともと神さまのからだは下界に降りる事を前提につくられておりません。きっと何にも触れないですよ」

だから銅像に入るのでしょう、と言われてしまえば、何も言い返せない。そりゃそーなんだろうけどさー。常識的に考えてさー。俺、神だし。


「もう十分に休憩なされたでしょう。さぁ頑張って行ってらっしゃい!」

業を煮やしたらしいエンジェルに再度蹴られ、俺はまた真っ逆さまに下界に落ちて、いや降りていった。




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