ブーッブーッ

「ん?なんだ…屁か?」
耳障りな音が、天空城に響いた。
「違いますよ!どうやら人間たちに言いたい事があるようですね」
「ブザー式なんだ…」

ファミレスも真っ青。


『神よ、最後の魔物の巣が封印されてから不思議な出来事が…』
「なっなんだと!」
神に仕える二人のうち、男の方が重々しく口を開いた。フィルモアが解放され、人々が生活を始めると、フィルモア各地にあった魔物の巣は次々と封印されていった。なんだかんだで、数がものを言う世界である。俺の気性のせいかもしれないけど。アッハハ。

『わたしはこのところ毎晩同じ悪夢を見るのです』
「悪夢か…夢見悪いと一日中調子悪いからなー」
「そういう問題じゃないです、神さま」
エンジェルが冷静にツッコミを入れる。わかってるよ!ちょっとふざけただけだろ!

『夢には南東の大穴よりミノタウロスという化け物が現れ、人々を呪い殺すと…』
「ふむふむ…ってマジで?!」
ミノタウロスか…魔王の眷属に違いない。にしても、ミノタウロスって半人半馬の化け物だよな…こんぼうとかで撲殺してきそうなのに、呪い。そういう肉体派の魔力はあんまり高くないのが通例なんだから、別の方法のがいいんじゃないか…。

『わたしには予知能力があるせいか、既にこの身体が魔物の呪いに蝕まれているような気がするのです』
「やたら具体的だな…予知能力は万能なのか」
変なところに関心していたら、エンジェルに尻を引っ叩かれた。お前、全裸だからってそんな趣味があるとは聞いてないぞ。
「気味の悪いことを言ってないで、人間たちを励まして下さい!神さまが堂々としていないと、人間たちは不安になって、不のループですよ!」
俺のちからは、全て人間に依存する。人間が神を崇拝し、敬うこと。それが、俺の魔力の源となる。…気がする。
「気のせいじゃないですから!この期に及んで何を!」
仕方ねーじゃん、俺、目覚めたばっかだし。システム関連なんてよくわかんねーよ。


業を煮やしたのか、台本どおりなのか、人間がいきり立って、声を張り上げた。
『神さま、事が起こらぬうちに地上へ戦いに赴きミノタウロスを消し去ってください!』
「よしよし!行きます!」
天空城では、エンジェルが既に地上降下の準備を整えており、こないだ使った銅像が大穴の中にセットされていた。なんたって穴に…。最初から銅像で地上に降りることは出来ないのだろうか。
「出来ないこともないと思いますが、地面にぶつかって粉々ですよ」
…俺は仕事の速いエンジェルに感謝した。少しだけ!


「よし、行ってくる」

俺の力は、未だ頼りないものだが、人間たちの言うとおり、事が起こるまで放置しているわけにもいくまい。
南東の大穴に、俺はつっこんだ。
打倒魔物!



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