今日も、人間たちの声が神の耳に届く―。

『おお神よ、わたしは近頃変なのです』
「マジか、どうした」
『頭の中に浮かんだ出来事がそのまま現実になる事があるのです』
「そんな特殊能力、設定したっけ…?」
『これが本当にわたしの力なら東の森から何か聖なる力を感じるのですが…』
「ん?何だって言うんだ」
「気になりますね。神さま、いかずちを落としてみては?」
「あぁ、やってみよう」

神殿に住む男、いわゆるアダムの言った通り、東の森…より正確に言うと南東の崖にはなにか、神が惹かれるものがある。エンジェルの助言に従い、いかずちを落とす。タッチペンで。

「今の落雷で人々が何か騒いでいるようです。話を聞いてみましょう」


『神さま、南東の崖より神の魔法が見付かったのでご報告いたします』
「キタ!神の魔法!せぇんきゅっ!!」

神は“炎の魔法”を手に入れた!

「いずれそなたらにも受け渡そうぞ」
「いや、彼らもう火扱えますし」

神らしくカッコ良く決めたというのに、全裸幼児は容赦ない。
というか、地上の人間が『神の魔法を見つけた』ってどういう状況なんだろうな。見たら『これは神の魔法だ!』って判るようになってんだろうか。


魔物の巣からは絶えず魔物が出現し、それをエンジェルが矢で射って消滅させてゆく。
神の役目はひーこら言ってるエンジェルを(まさに慰め程度に)元気付けながら『ホラそっち行ったぞ!』と容赦無くこき使うことだ。
こっちの魔物をやっつければあっちの魔物が。いたちごっこは続く。


『おお神よ。我々は獲物を取るということを覚えました』
「狩猟時代に入ったんだなー」

人間の文明進化のスピードは凄まじい。しかし人間自体の進化スピードは他の動物と変わらないように設定しているので、もしこの先に自動車が飛び回るような時代が訪れても、人間の本質は狩猟種族のままだろう。…そんな事どうでもいいか。

『これで我々は魔物と戦うことが出来そうです。道を魔物の巣へ導いてください』
「おぉーっ!マジか!こっちだ!この魔物の巣を駆逐してくれ!」

町の方向を魔物の巣に向かわせる。これで少しはエンジェルの負担は減るだろう。

「あの毒舌全裸幼児が息切らすほど振り回されているのを傍観してるのも、また一興だったがな」


「何言ってんすか神さま」
「うへぇっ!お前いたの?!」

いつの間にかエンジェルが天空城に戻ってきていた。

「誰が毒舌全裸幼児ですか。うんこ神が」
「それはうんこの神ってこと?!クソほどの価値もない神だってこと?!」

どにしろ酷い罵倒には変わりない。毒舌な上に全裸なだけのことはある。

「こんな事より、神さまがボケッとしてるうちにほら、全ての魔法陣が」
「封印されてる!」

ばぅうむ!
というなんだか間の抜けた音を発し、魔物の巣たる最後の魔法陣が人間の手により封印された。


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