フィルモアには、いや、神が魔物から取り戻した土地には、まず最初に神殿が置かれる。
人間と神が対話をし、お互い助け合いながら生活を営んでいくためだ。

「神さま、突然ですがここフィルモアの人々は伝えたいことがあようですよ」

地上に降りているエンジェルからメッセージが入る。人間と神が対話すると言っても、神は直接地上に降りられないので、神の声は人間に届かない。こうやって伝令役にエンジェルを使うのだ。

「なんぞ?」
『おお神よ。ここフィルモアには樹木が多く非常に家を建て辛いのです』
「自然いっぱいで良いと思うけどなー」
『辺りの木を焼き払い我々に道を伸ばす方角をお示し下さい』
「えぇっ環境破壊じゃん」

というわけで、神の声が直接人間に届く事はない(神殿に居る人間の声は、神に聞こえる)。代弁者たるエンジェルが、不適切な表現を削って、人間に対応する。

「神はこうおっしゃっています。『いかづちを落とそう』」


「神さま!聞きましたか?いかづちですよ!」
「えー。というかどうすんのか分からないし」
「パネルに表示されているでしょう」

プロジェクターのような役割を果たしている大理石のパネルを見ると、いかづちや雨、などの天候に関するコマンドが表示されている。

「これかー。こんなんで天気決めてたんだっけ?ホントに神の匙加減だなぁ」

ぽち、と人差し指一本でいかづちを降らせる。
ここら辺にしよう、と指定したエリアの木々は焼け落ち、人々が生きていくのに十分な空間が出来た。


ピロリーン。
緊張感の無い音が天空城に響く。
これは人間たちが一方的に神に語りかけているという祈りの合図だ。
返答することはないが(第一いまエンジェル忙しそうだし)、余裕があったら聞いている。

『神さま。この美しき土地をわたしたちに与えてくださったことに感謝します』
『こうして働けるのも神さまが見守っていてくださるおかげですわ』
「あ、あぁありがとう。なんかいい気分になってしまった」



「神さま。どういう道を辿って町を発展させますか?」
「辿る…?どうするんだ、ってこれか」

パネルの上に、ペンが出現した。なんたってまぁ万能なパネルだ。エンジェルによると、天空城のだいたいの機能を司ってるらしいからな。

「タッチペン?いいのこれ、ハードSFCでしょ?あぁどっちも任天堂か」
「何をおっしゃってるんです」
「いや、なんでもないのよウン。じゃあはい」

宙に浮かんだスクリーンを、ペンでなぞる。この使い方であってるはず。

「フィルモアはこれから今辿った奇跡の通りに発展してゆきますよ」

正解だったらしい。
にしてもこの“奇跡”っていうのはどんな風に人間に伝わってるんだろうな。地上絵的な?


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