小説 | ナノ



しばらくの間、2人で体温を分け合って。
「ユキちゃん、見てみぃ。雪やで」
無邪気な声に、夜空を見上げると、舞い降りてくるのは白い小さな雪。
「こうやって巡っていく季節や小さな感動や…
 いろんなことを共有していこうや」
そうですね…と笑みを返し、これから始まる2人の時間が永遠に続くよう願いを込めて、
白い結晶を見つめた。

「ところで」
途端にギュッと強く抱きしめられて驚く私に、頭の上からくぐもった声が聞こえる。
「いつまでも、こないしてたいんやけどなぁー。
 風邪ひいたらあかんし、自分、写真なんて撮られたら山田さんに迷惑掛けるしな」
ふっとぬくもりが離れて。
目の前にはいつもの穏やかな笑顔。
「そうですね」と物わかりのいいふりをしながらも、名残惜しさに思わず私は瞳を伏せる。
「そないな顔をされると男はエライ弱いんやけどなぁ…
 でもユキちゃんとはゆっくり付きおうていきたいから、周りには迷惑かけたないねん」
ポンポン、と降ってくる手。
「あったかいものでも飲みに行かん?
 体冷えたやろ」
「松田さんも、せっかくの酔いが醒めちゃいましたね」
「そやなぁー…
 きっとまだ慎たちは酔っ払らっとるやろうな」
クスリと笑う口元に見惚れて、私はまた恋をする。
きっと永遠に覚めない恋を。

それはきっと、初雪の魔法。

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テーマ「人外ファンタジー」
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