小説 | ナノ



「でもな、ユキちゃん、誰にでもこんなこと言うたらあかんで」
「…どうしてですか?」
首を傾げると、
「うーん、ユキちゃんが、単なるおっちゃんや、とか
 兄貴みたいなもんや、って思うてたかて、
 こんな可愛い子にそんなん言われたら、男はみんな舞い上がってまうから」
彼氏だけにしとき…って、そんなこと言うから。
私は、「彼氏なんていないし」って、くすりと笑う。そうして、
「嘘ばっかり。松田さんは舞い上がってなんかいないくせに」
思わず、すねたように出てしまった私の言葉に、
「…なんやそら」
少しの沈黙の後、返ってきた松田さんの声は、
いつもより少しトーンの低い、でも優しい、どこか甘さを含んだ声で。
でもどこか少し、意地の悪いような眼差しをしてる。
「ふーん?舞い上がってもええん?」
指と指を絡め、しっかり手を握り直すと、カーキのコートの左ポケットに2人分の手を導いた。

まるで、身体中が早鐘のようにドキドキしてる。
冷たかった私の右手が、だんだん温かくなってきて。
その感覚に、これが夢じゃないんだな、って思う。
なんだか不思議な感じ。

ふふふ、と小さく笑うと、松田さんも薄く笑みをたたえてこちらを見る。
「やっぱりユキちゃん、酔うとるやろ」
「酔ってないですよー」
「ほんまやろか?…ほら、あっち側、イルミネーションやってんで。
 見にいかん?」
「行きたいです!!」

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