小説 | ナノ



くしゃん、
小さくくしゃみが出た。
「あーすまん、気ぃつかんかった」
これ着とき、と着ていたコートを掛けてくれた。
途端に、ふわっと煙草の香りがする。松田さんの香り。
大きな肩。
なんだか、抱きしめられているみたいだ、なんて思ってしまって、顔が赤くなる。
「あれ?今度は暑い?」
気遣わしげに聞かれ、えっと…と口ごもる。
「えっと、えっと…松田さんは、寒いのに外で煙草吸ってたんですね?」
「うん、煙草、なくなりそうやったからコンビニ行ってきてん」
「なんだ、よかったぁ。帰っちゃったのかって探しちゃいました」
「探してくれたん?」
からかうような声音と言葉に、また頬がカーッと赤らむ。
「も、もうっ」
「はは、ありがとな。したら、ユキちゃんにも会えたことだし
 …もう1軒、どっか行く?それとも戻る?」
あんまり普通にカラリと誘うから、ドキドキするのは私だけなのかなってちょっと悔しくなって、
でもやっぱり断るなんてできなくってうなづく。
「もう1軒、連れてってください」

コートとバッグを取りに戻って、目立たないように、でも急いで部屋を出て。
松田さんは、そのまんまの場所で待っていてくれた。
「お待たせしました」
思ってた以上に弾んだ声が出てしまって驚く。
「急いだやろー、鼻の頭、赤くなってんで」
ちょいとつつかれて、なおさら赤くなる。
「もうー!!…なんか今日の松田さん、スキンシップ多いです」
抗議のつもりで軽く睨むと、
「だって、ユキちゃんとデートやし。
 ユキちゃんは特別」
「特別?」
「そう」
目を細めた、大好きな笑顔を見せるから、私はそれ以上何も言えなくなってしまう。
「じゃあ、私も、松田さんは、特別です」
どうしよう。
きっと私の気持ち、全身からあふれ出ちゃってる。
ドキドキしながらもどうすることもできなくて、赤くなった頬を手で覆った。

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