肆
爆風によって飛ばされた長槍と輪刀が毛利の背中に突き刺さる。
「!!」
あまりの衝撃に息が止まる。
「…!!がっ!!」
長槍と輪刀が背中に刺さったまま、重さで落ちた。
耳に届くのは服と皮膚が裂ける音。背中に焼ける様な熱さを感じながら、自分の倒れ込む先を見るとそこには…、
満面の笑みを浮かべた長曾我部が、両手を広げて立っていた。
辺り一面に漂う、硝煙の匂いと油の匂い。
そして、鉄錆の匂いに肉の焼ける匂い。
夥しい人の残骸の中、静かに笑むその姿は…
『真の、鬼、か…?』
そのまま抱き止められた。
「…うっ…ごほっ!」
喉の奥から血がせり上がってくる。
『内蔵まで届いたか?』
段々と意識が遠退いていく。すると、長曾我部の手がおもむろに毛利の顎を捉え、そして強引に口付けてきた。
じゅるっ
「んン!」
毛利はその行為に戦慄く。
『血を呑んでいる!?』
驚きに目を開いていると、長曾我部は舌で唇を拭いながら、恍惚の表情でこう言った。
「極上の蜜、持ってんじゃねーか。」
花が欲しくなったと、この男は言っていた。今更ながらその言葉が空恐ろしくなった。
知らず震えている毛利を見て、長曾我部は優しい笑みを浮かべながら、
「大丈夫だ。ちゃんと綺麗に飾ってやっから…。」
と、また的外れな事を言った。
毛利が意識を繋げていられたのは、そこまでだった。
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