玖
そして、その方法を実行し、松寿と一つになれた。
一つになれてから数日後、松寿達は慌ただしく四国を後にしたが、“離れていても、自分は松寿の中に居る。”そう思うと、元親は少しも寂しさを感じなかった。
だが、松寿が元就となって、中国の覇者になった時、元親は再度不安に襲われた。
天下を取れる器を持つ者が、ごまんと居る今の時代、大国である中国が他国に狙われない筈がない。
そして、一代でその大国を征した元就を危惧しない筈も…。
現に、元親が天下を取らせようと助勢している男は、“元就は確実に殺せ。”と言っている。
生きている限り、必ず禍根となる存在。
もう、攫って側に置くという選択肢は無い。
なら、どうすれば良いのか…。
その答えは、疾うに出ていた。
そして今、元親は松寿と共に居る。もう、決して離れる事はない。
「アンタが生きている間、不安で仕様がなかったんだぜ…。他の誰かに殺されないか。ってな。」
完全に一つになる為には、元就の血一滴、肉一片も欠けてはならない。
「ホント、間に合って良かったぜ。」
元親は、安堵の溜め息を吐きながら、うっすらと微笑む。
「これからは、ずっと一緒だ…松寿…。」
そう言って、愛おしそうに己の身体を抱き締めた。
終
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