拾遺 | ナノ



一面焦土と化した野原。

最早只の肉叢(ししむら)と成り果てた者達が作り出した血の海の中に、元親は居た。

美しい銀糸を朱色に染め上げ、悠然と佇むその姿は、正しく“鬼”。元親が居るその箇所だけは、地獄の様相を見せていた。

あの日、毛利元就を討ち取った日以降、元親は出る戦全てに勝利している。

その強さは、鬼神と評される程になっていた。

「さすがアニキ!」

「アニキさえ居りゃあ、俺達ぁ何も怖くねえ!」

口々に部下達が称賛の言葉を掛けてくる。

「おう!俺一人の身体じゃねえからな。負ける訳にはいかねえ。」

その元親の言葉を、自分達へ向けてだと解釈した部下達は、“アニキー!”と、一斉に活気付く。

元親は、そんな部下達に優し気な笑みを見せながら、自分の中に居る人物の事を想う。

幼い頃、見た目のせいで他家の者どころか臣下でさえも、自分に奇異の目を向けてきた。そのせいで、常に人の目を気にして、誰の目にも触れたくないと、自然と内に籠る様になり、外になど出ようとも思わなかった。

松寿が来るまでは。

ある日、交易のある隣国の毛利家の若君の相手をするように。と、父に言われた。勿論元親は渋ったが、父は“いい加減跡取りの自覚を持て。”と、半ば強制的に了承させられた。

対面する直前まで、元親の心の中はずっと靄掛かっていた。

だが…。

初めて会った時から松寿だけは、自分の事を受け入れてくれて、そして、自分の見た目が綺麗だと言ってくれた。

元親自身忌み嫌っていた見た目を。

付き合っていくに連れ、松寿は内より外、太陽の下に居るのが好きなのだと分かった。

太陽の光を受けた元親の髪が、虹色に輝いて綺麗だと、松寿は言う。

だが、それを言うなら太陽の光を受けた松寿の髪も、黄金色掛かって綺麗だと、元親は思った。

松寿と居ると楽しい。ずっと一緒に居たい。

その思いは、日に日に強くなっていく。

そう、叶わないと分かっていても。

今は友であっても、これから先、関係が変わらないという保証は無い。でも、一緒に居たい。

だから、一緒に居られる方法を考えた。

考えて、考えて…。

辿り着いた結論は、“一つになれば良い。”という事だった。

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