陸
「本当?ありがとう。」
弥三郎が嬉しそうに、そう言ったかと思ったら、人差し指を己の左目の目尻に当て、ゆっくりと中へと差し込んでいく。
初めは涙が流れ、それを追う様に赤い滴が溢れ出す。そして、丁寧に抉り出していき、弥三郎の顔半分が赤く染まったかという時に、ぶちりと音がして、その手には青く美しい目玉が乗っていた。
元就は、目の前で行われている行為が現実のものだと思いたく無かった。
白昼夢だと…。
しかし。
「松寿…。」
そう言って、ソレを元就の口の中に押し込まれ、無理矢理これが現実だと実感させられた。
生温くて生臭い。口から鼻に抜けて、血の臭いが広がっていく。
身体は飲み込む事を拒否するが、口を塞がれているせいで吐き出す事は叶わない。
舌の上に感じる滑った感触が気持ち悪くて、上手く息が出来ずに段々と意識が遠退いていく。
ゴクリ。
元就の喉が上下した。
「これでずっと一緒だね…。」
元就の口を塞いだまま、弥三郎は変わらず、嬉しそうに耳元で囁く。
そして、そのまま元就は意識を失った。
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