拾遺 | ナノ



そして、明日国許へ帰るという日の事。

「どうした?弥三郎。」

何時も通り二人で出掛けた先で、元就は、何故か神妙な顔をしている弥三郎に気付いた。

「…あのね…。」

弥三郎は、ぽつりぽつりと話し出す。その内容はこうだ。

こうやって、松寿丸と仲良くなっていく度に嬉しい反面、とても不安になる。ずっと一緒に居たい…。明日帰ると思ったら、急にこう思った。と。

離れても友達だ。と元就は言ったが、友達でも、敵になったら討たなきゃいけない。そういう世の中だって…。とそこまで言って弥三郎は黙ってしまった。

多分家臣か、誰かに言われたのであろう、元就は少し気分を害したが、親兄弟でも謀り合い、殺し合う様な今の時代、その者がいう事も最もであると納得した。

今は子供同士だし、まだ庇護される立場にある。家名に泥を塗る様な行為をしなければ良い。

だが、一旦当主という位置に就けば、否が応でも国に住む者全てを護る責任が生まれる。

例え友であっても、国を脅かす存在であれば討たねばならない。

「仕方がない。」

元就は、そうとしか言えなかった。

「うん。だからね…。」

弥三郎は、さっきまでの神妙な顔とは違う、明るい笑みを漏らす。

「一つになろう、松寿。」

幼い元就に弥三郎の言う言葉の意味は解らない。

だが、“弥三郎が望むなら。”と、その言葉を受け入れるいらえを返した。

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