拾遺 | ナノ



元就が、まだ“松寿丸”と呼ばれていた頃、父が長年患っていた病が完治したと言う事で、治癒祈願へと訪れた寺院に御礼参りに来た事があった。

その際に世話になったのが、土佐の長曾我部家である。

そこに一人の少年が居た。名を弥三郎と言う。

彼は、色白で優しい面差しをしており、若君と言うよりは姫君かと思う様な見た目を持っていた。

元就は遊び相手が出来たと喜んだが、どうやら弥三郎は引っ込み思案な質らしく、中々外へ出ようとはしなかった。

なら日頃は何をしているのかと、尋ねれば、邸内に籠って読書をしたり、姉に遊んで貰ったりしていると言う。

確かに、弥三郎は知識が豊富で、一緒に喋るのは楽しい。何故外へ出ないのかと尋ねれば、“僕はこんな見た目だから…。”と、寂しそうに返してきた。

見た目が何だというのだろう?その銀糸も、青い瞳も悪くはない。むしろ綺麗だと思う。

そう素直に伝えると、弥三郎は驚いた様な照れた様な錯雑とした表情を見せた。

“それに…。”と、元就は続ける。

“日輪の光を受けたお前を見てみたい。”

きっと、もっと綺麗だ。

と。

その元就の言葉に意を決したのか、弥三郎は怖々ながらも外に出た。

日輪の恵みを受けた弥三郎は、想像していた通りとても美しく輝いている。

元就は何か特別な宝物を見付けた様な、そんな高揚感を覚えた。

その日以降、二人はよく一緒に外へと出掛けるようになり、その仲も濃密なモノへとなっていった。

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