裏黒 | ナノ

十三

それから後、元親は相手の都合も考えず、元就を所構わず抱くようになった。

それこそ、学校内でも。

普段は無表情であったが、元親に抱かれている時だけ憎さげな顔を見せる様になった。

只、時折索漠な顔もするが。

だからと言って、優しくする事は出来ない。

常に元就にとって、支配したい強い相手でなければならないからだ。

「あー、辛れえなぁ!」

「Ah?どうした、急に。」

「何か悩み事?」

突然、空に向かって意味不明の嘆きを叫ぶ元親に、何事かと友人二人が声を掛けてくる。

「別に。で?何の話ししてたっけか?」

「おいおい。だから、あの事件の原因は何だったのかっつー話だよ。」

元親の問い掛けに溜め息を吐きつつも、政宗は答えた。

“あの事件”とは、元就が巻き込まれた暴力事件の事だ。

あの時、五人の女生徒に強引に連れ出され、私的制裁を受けるところであったが、逆に元就が返り討ちにしたのだが、その後その女生徒達が謂われ無い暴力を振るわれたと、教師に訴え大騒動になった。

結局、目撃者である元親の証言で事なきを得たが、それが切っ掛けで益々元就はこの学校内で浮いた存在になってしまった。

「あー、あれなあ…。“男前三人に構われて調子に乗るな”ってのが理由。」

元親も初めて原因を聞いた時は呆れ返ったものだ。

そして、目の前の二人も同じ様に感じているらしい。

「その娘達、おかしいんじゃないの?」

「ま、大体そう言うイチャモン付けてくる奴に限って、自分からは積極的に絡んで来ないよな。逆恨みだ、逆恨み。」

「…お前等、謙虚って言葉知ってるか?」

“男前”という語句をあっさりと受け入れた二人に、今度は元親が溜め息を吐く。

「自分で男前って言った奴に言われたくないぜ。」

「はは、確かに。」

三人で笑いあっていたら、バンッ!と、扉が開く音が響いた。

一斉に扉の方を見る、すると其処には。

「わー…。」

「Oh.本日二回目。」

屋上に吹く強い風のせいで、スカートが捲れ上がり、白いフリルの付いたショーツを惜し気も無く披露している元就が居た。

「だからお前は一寸ぐらい恥じらえよ!」

何のリアクションも取らない元就に、政宗が思わず突っ込みを入れる。

「別に、見られて恥ずかしい物は身に付けておらぬ。」

「パンチラ見れて、ラッキーって感じさせない女子も珍しいよねえ…。」

「そうか。」

「お前、ホント3Mだな。」

政宗が初め、元親に言った謎の言葉だ。

「何だそれは。」

意味が分からない元就は、当然聞き返す。

「無表情、無感情、無関心!」

「成る程、言い得て妙だ。」

「ハイハイ、ありがとよ!」

今一噛み合っていない二人の会話に、慶次は苦笑いをする。

「元親って、よく就ちゃんと付き合えるよね。感心するよ。」

「うん?そうか?ガキの頃からの付き合いだからな、慣れてるだけだろ。」

そう言って、元親は空を見上げ流れて行く雲を眺めた。









最近気が付いた事がある。優しくしたいのに出来ない葛藤に囚われている筈なのに、それ以上の充実感に満たされている自分に。

元就の事をずっと昔から“ああいう風”に支配したかった様な気がする。

それはずっと昔…。子供の頃ではない、もっとずっと昔に。

「気色悪い…。」

元親が自分に向けた悪態は風音に掻き消され、誰にも届く事は無かった。



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