六
ヤバイ…。
ヤバイヤバイヤバイ!
今、元親の頭の中にはその言葉しかない。
「お前一人の命じゃ無いんだ。」
この手を離せば、そのまま此処から飛びそうな位、今の元就は元親には危うく映った。
「…分かっておる。」
「…。」
元親は、その言葉の真意を図る。
「だから、どうしたらこの時代に馴染めるのかと探っていた…。」
それで、模索した結果がアノ行動だと言うのか。
「…難しいな。」
元就の、半ば諦めたかの様な呟き。
「じゃあ、馴染む方法が見付かるまで、ずっと悩んでろ。」
元親は何と言えば良いのか分からず、只、冷たくそう言った。
「…帰るぞ。」
元親はこれ以上此所に居るのが嫌になり、元就の手首を引いて、強引に連れて行く。
腕が抜けるかと思う程の痛みを感じながらも、元就は自分より倍はある元親の歩幅に何とか付いて行く。
ふと、元親を見上げると、広い背中が元就の目の前にあった。
それは、とても懐かしい背中。
『ああ、あの頃に似てきたな…。』
元就は昔過ぎる出来事を思い出す。
「何故、貴様が我の今生にまで関わっておるのだ…。」
と、言う元就の呟きは元親の耳には届かなかった。
その日以来、元親は元就と手を繋いで行動する様になり、周りからどんな嘲りを受けようとも、出来る限り傍に居た。
そして、月日は流れ…。
二人は同じ高校に進学した。
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