裏黒 | ナノ



ヤバイ…。

ヤバイヤバイヤバイ!

今、元親の頭の中にはその言葉しかない。

「お前一人の命じゃ無いんだ。」

この手を離せば、そのまま此処から飛びそうな位、今の元就は元親には危うく映った。

「…分かっておる。」

「…。」

元親は、その言葉の真意を図る。

「だから、どうしたらこの時代に馴染めるのかと探っていた…。」

それで、模索した結果がアノ行動だと言うのか。

「…難しいな。」

元就の、半ば諦めたかの様な呟き。

「じゃあ、馴染む方法が見付かるまで、ずっと悩んでろ。」

元親は何と言えば良いのか分からず、只、冷たくそう言った。

「…帰るぞ。」

元親はこれ以上此所に居るのが嫌になり、元就の手首を引いて、強引に連れて行く。

腕が抜けるかと思う程の痛みを感じながらも、元就は自分より倍はある元親の歩幅に何とか付いて行く。

ふと、元親を見上げると、広い背中が元就の目の前にあった。

それは、とても懐かしい背中。

『ああ、あの頃に似てきたな…。』

元就は昔過ぎる出来事を思い出す。

「何故、貴様が我の今生にまで関わっておるのだ…。」

と、言う元就の呟きは元親の耳には届かなかった。

その日以来、元親は元就と手を繋いで行動する様になり、周りからどんな嘲りを受けようとも、出来る限り傍に居た。






そして、月日は流れ…。

二人は同じ高校に進学した。

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