四
そして、その蟠りが大きな不安となる出来事が起こった。
それは、二人が中学生になり、最上級生になった頃。
元就はその頃になると、元からそんなに明るい性格ではなかったのだが、益々無口になり元親以外の人間と距離を置き出した。
当然クラスからは浮きたくるし、唯一言葉を交わす元親は、周りから“物好きだな”とからかわれていた。
元就は見た目が整ってはいるが、丸っきりの無表情の為、その分却って不気味に見えるらしい。
以前、その様な事を、元親はクラスメイトに言われた。
『そう言やあ俺、アイツの笑顔って見た事無いな…。』
幼い頃から一緒に居るのに、元就の笑顔が全く浮かばない。
『これって、ヤバくないか…?』
しかし、幾ら何でも家族の前では笑う事位あるだろうと、元親は自分の不安を打ち消した。
そんなある日の放課後、元親は、元就が家とは違う方向へ歩いているのを見掛け、“何時も寄り道もせず真っ直ぐ家に帰るのに珍しいな”と思い、暫く目で追っていたら、何かを懐に抱いている事に気が付いた。
「……。」
何故か、声を掛けるのは躊躇われて、元親はこっそり後を着けて行く事にした。
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