三
元親と元就は、物心が付いた時からずっと一緒に居た。
二人が小学生の頃、よく連れ立って、近所の神社へ遊びに行ったものだ。
ただ、元就は境内に着くと元親を置いて、一人で何かを探しに何処かへ行ってしまうのが常であったが…。
仕方がないので、何時も元親は他の子達と遊ぶか、一人で神社の裏山へ小冒険に行ったりしていた。
そして、辺りが薄暗くなり始めたら、元就を捜して連れて帰る事が元親の日課となっていた。
「就ちゃん、何処?もう帰ろう。」
社の裏手に回った時、カサリと、渇いた音が元親の足元からする。
「?」
足を退けると、そこには虫の死骸が転がっていた。
元親は、まだ幼かったせいか、それを見て嫌悪感は湧かなかったが、何時も不思議に思っていた事がある。
何故かこの神社は昆虫の死骸が多く、その上、全てバラバラに千切られたものばかりであった。
「あ、就ちゃん、ここに居たの?」
元就が振り向く。
そして、元親はその原因を知る事となった。
はらりと舞う、黄色くバラバラになった何か。
元親の目に、その“何か”の胴体が映った。
「就ちゃん、それ…。」
「…蝶は翅(ハネ)は美しいのだが…。」
元就は無感情に呟く。
「鱗粉が、な。」
手を払いながら元親に向き直る。
「帰るのだろ?」
そう言って、固まっている元親を置いて、さっさと一人で歩いて行く。
「あ、待ってよ。」
慌てて元就を追うが、元親の心には、小さな蟠りが生まれていた。
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