裏黒 | ナノ



「お前の幼馴染み、ホント3Mだよな。」

昼休みに屋上で悪友達と昼食を摂りつつ駄弁っていたら、不意にその中の一人、伊達政宗に言われた。

「何だ、それ?」

そう言いながら、元親は横に居る前田慶次から、“松姉ちゃん特製卵焼き”を奪って口に放り込む。

「あ〜!俺の卵焼き!」

慶次は抗議の声と、視線を元親に投げた。

「ケチケチすんな、お前んトコの姉さん、料理美味いから色々参考になるんだよ。」

「Ah〜、そう言えばチカ、毛利に飯作ってやってんだっけ?」

政宗は、食後のジュースを啜りながら言う。

「ああ、向こうの両親が居ない時だけだけどな。アイツ独りにしたら絶対食事とかしねえし。」

元就の両親は共働きで、どちらもそれなりの役職に就いている為、出張も多く家族三人が揃う方が珍しいという家庭環境だ。

「あ〜、ぽいぽい。休みの日とか、一日中寝てるイメージあるなあ。それでチカが面倒見てやってんの?」

慶次が弁当を掻き込みながら話に加わって来る。

「甲斐甲斐しいこって。」

呆れつつ政宗は、“まあ、構いたくなる気持ちは解らんでも無いけどな。”と、呟いた。

「入学した時、ちょっとした騒ぎになったもんね。」

と、慶次が政宗の言葉に乗った。

元就が新入生としてこの学校にやって来た時に、儚げな美人が入学して来たと、かなり話題になったものだ。

だが。

「儚げだと思わしといて、まさか、ただぼへーとした性格だっただけとはな。ありゃ詐欺だ。今じゃ、空気みたいな存在だし。」

「自分達が、勝手に勘違いしただけだろうが。」

確かに政宗の言う通り、元就に対する羨望とも取れる視線は、日に日に向けられなくなっていった。

「でもさ、やっぱあの事件のせいじゃないの?皆が敬遠しだしたのって。」

「慶次。」

「あ、ゴメン…。」

政宗に咎められ、慶次はバツが悪そうに頭を掻く。

『事件ねえ…。』

流れる雲を見ながら、元親は幼馴染みとの過去を思い出していた。

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