二
「お前の幼馴染み、ホント3Mだよな。」
昼休みに屋上で悪友達と昼食を摂りつつ駄弁っていたら、不意にその中の一人、伊達政宗に言われた。
「何だ、それ?」
そう言いながら、元親は横に居る前田慶次から、“松姉ちゃん特製卵焼き”を奪って口に放り込む。
「あ〜!俺の卵焼き!」
慶次は抗議の声と、視線を元親に投げた。
「ケチケチすんな、お前んトコの姉さん、料理美味いから色々参考になるんだよ。」
「Ah〜、そう言えばチカ、毛利に飯作ってやってんだっけ?」
政宗は、食後のジュースを啜りながら言う。
「ああ、向こうの両親が居ない時だけだけどな。アイツ独りにしたら絶対食事とかしねえし。」
元就の両親は共働きで、どちらもそれなりの役職に就いている為、出張も多く家族三人が揃う方が珍しいという家庭環境だ。
「あ〜、ぽいぽい。休みの日とか、一日中寝てるイメージあるなあ。それでチカが面倒見てやってんの?」
慶次が弁当を掻き込みながら話に加わって来る。
「甲斐甲斐しいこって。」
呆れつつ政宗は、“まあ、構いたくなる気持ちは解らんでも無いけどな。”と、呟いた。
「入学した時、ちょっとした騒ぎになったもんね。」
と、慶次が政宗の言葉に乗った。
元就が新入生としてこの学校にやって来た時に、儚げな美人が入学して来たと、かなり話題になったものだ。
だが。
「儚げだと思わしといて、まさか、ただぼへーとした性格だっただけとはな。ありゃ詐欺だ。今じゃ、空気みたいな存在だし。」
「自分達が、勝手に勘違いしただけだろうが。」
確かに政宗の言う通り、元就に対する羨望とも取れる視線は、日に日に向けられなくなっていった。
「でもさ、やっぱあの事件のせいじゃないの?皆が敬遠しだしたのって。」
「慶次。」
「あ、ゴメン…。」
政宗に咎められ、慶次はバツが悪そうに頭を掻く。
『事件ねえ…。』
流れる雲を見ながら、元親は幼馴染みとの過去を思い出していた。
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