一
その男との共通点等無い。
強引にこじつければ、同じ学校に通っているというだけだ。
「よう、毛利…。」
「!」
あぁ、今朝は会わずに済んだと思ってたのに…。
「何無視してんだ?コラ。」
「無視などして…「返事が遅せーんだよ。」
どうしよう。機嫌が悪い。
「…、何か用か?」
声が震える…。
「す…数学の宿題なら、後で渡すから…。」
廊下の窓から入る朝の日差しが、目の前の男の銀髪を照らす。髪の色は生まれつきらしい。背が高くて精悍な顔立ち、面倒見が良く、優しい性格。成績も悪くはない。学校の内外問わず、慕う者が多い。
この男が…、
私は怖い…。
「宿題はどうでもいいんだよ。」
怯えて顔が見れなくてつい、俯いてしまう。
「最近お前、俺の事避けてねぇ?」
なるべく会わない様にと、段々登校時間を早くしたのが裏目に出た…。
「避けてなど…。」
「嘘付け。こんな朝練が始まる前から学校に来る奴なんざそういねーぞ。お前クラブなんも入ってねーだろ?」
「…あ、あの…。」
咄嗟に言い訳も出ない。
「こっち来い…。」
「…!」
そう言いながら、腕を掴まれた。
あの時の恐怖が甦る……………。
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