十三(慶次視点)
『まさか、身体で確かめるつもりだったとはね…。まあ、結果オーライだったけど。』
慶次としては、両親が帰国するまで一人ぼっちで留守番をしている元就に二人が付き合ってあげれば良いと考えて、軽い気持ちで情報を提供したのだ。
その時は。
情報提供した翌日に、何気なく元就に鎌を掛けてみたら、見事に引っ掛かり二人について相談を受けた。
『おお!両想いじゃん!』
今、ここで慶次が“あの二人も好きって言ってたよ。”と、言えば大好きな元就が幸せになれる。
しかし、慶次はその台詞は自分が言う事ではないと、好きな人から直に言われた方が他人を介するより何倍も嬉しいに違いないと思い、敢えて言わずにいた。
暫しの沈黙の後、元就がしゅんとした表情で、“どちらがより好きなのか分からないし、選ぶ事も出来ない。”と、言う。
それを聞いて慶次は、両想いだったら問題ないだろうと思い。
「じゃあ、さ。身体の相性で決めたら?」
と、提案した。
「……。な、何を…!?」
まさかのアドバイスに、当然元就は顔を赤らめ狼狽する。
その狼狽える姿も可愛いなぁ〜、と、思いつつ、慶次は真剣な表情を造り…。
「いや、だってさ、結局行き着く先はそこでしょ?だったら…ねぇ?」
心と身体が通じれば何か分かるかもしれない、それこそどちらがより好きなのかも…。
慶次の提案に、元就は暫く思案していた。
「だが…、最近は付き合いも無いし…。確かめるにもどうしたら良いのか…。」
どうやら慶次の提案は受理された様だ。
「あー、それなら大丈夫。」
「…?何故だ?」
「俺といちゃ付いてたら、絶対向こうからリアクションかけて来るから。」
少なくとも、元就の両親が海外出張する前日にはあの二人が何か行動を起こすだろうと、慶次は自信を持って宣言する。
もし、そうなったとしても、性行為の仕方が分からないと言う元就に基本的な事を教えておいた。
慶次のアドバイスが役に立ったのか、その後晴れて両想いになった、筈なのだが…。
「ところで、あの二人は?」
そう言えば、今日一回も一緒に居るところを見てないなと思い、元就に聞いてみる。
すると、元就の表情が一瞬で不機嫌なモノに変わった。
「前田よ、あの二人の異性交遊の広さを知っておるか?」
学校内外を問わず、存分に浮き名を轟かせている二人だ。知らない方が珍しい。
元就の気迫に圧されて、慶次は只頷く。
「我もな、少々気になって二人に訊ねたのだ。そしたら、何と言ったと思う?」
二人が何と答えたかは分からないが、とにかく元就の機嫌を損ねるには充分な理由だったらしい。
“さあ…?”と、慶次が首をかしげると、元就はご不満露な表情のまま。
「“元就の為に、他の女で練習してた。”等とほざきおったのだ!」
それを聞いて慶次は思った…。
『あの二人、アホだ!』
「ま、まあまあ、あれだよ、好きなコに格好付けたかったんだよ…多分。」
自分もやや煽った手前、一応慶次は二人をフォローする。
が、
「ヤり過ぎて死んでしまえばいい!」
全く効果は無かった。
ぷりぷりと怒っている元就を見て、“ああ、怒り方もウチの夢吉に似てて可愛いなぁ〜。”と、慶次は早々にフォローを諦めた。
結局最後には、元就が仲直りの仲立ちを頼んでくる事は分かっていたから…。
慶次は蒼穹を見上げて、
「いや〜、やっぱり恋って良いモンだね〜。」
と、何時もの言葉を口にした。
終
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