十一(慶次視点)
「まあまあ、良いんじゃないの?そういう愛の形があっても。」
「…不実ではないか?」
「本人達がそれで良いって言ってんだから、それで良いんだよ。」
「…そう、か?」
慶次のやや独自的な持論に、まだ納得がいかないようで、元就は小首を傾げている。
その仕草が小動物みたいで可愛いな、と、慶次は頬を緩めて眺めていた。
そして、ふと、数日前の出来事を思い出す。
そう、あれは元就に恋愛相談される少し前の事…。
「よう、慶次。単刀直入に聞くが、お前元就とドコまでいってんだ?」
“午後の授業は、サボりで決まり!”
と、屋上で惰眠を貪っていた慶次は、突然の来訪者に強制的に起こされた。
寝転んだままの姿勢で目を開けると、学校内の有名人、眼帯'Sが自分を見下ろしている。
「……?へ?ドコまで?」
そのただならぬ空気に圧倒されたのと、起き抜けに質問されたせいで、思考が儘ならない。
「どこ…?どこ…え〜っと…、Wホテル?」
「なっ…!?」
まだハッキリしない頭に浮かんだ文字の羅列を、そのまま口にしたら、二人の顔が引きつった。
「…の、ケーキバイキング。」
元就と学校外で出掛けた所と言えば、其所位しか思い当たらない。
細っこい身体なのに、何処にケーキが消えているのだろう?という位食べていた元就を思い出し、慶次はつい、笑みをこぼす。
「…寝惚けてんのか?」
「つーか、区切って言うな!」
にやけている慶次に、呆れ顔の眼帯'Sが、突っ込みを入れてくる。
「何々?急にナリちゃんの事聞いてくるなんて。…あっ解った!二人共ナリちゃんが好きなんだろ〜。」
すぐに恋愛話をしたがる慶次は、何時も通りに話の流れをそっちに持っていった。
「!!!」
慶次の台詞を聞いた途端、二人の顔が真っ赤になる。
「…え?マジで?」
予想外にウブな反応をした二人を見て、慶次の眠気は一気に吹っ飛んでいった。
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