十
晴れ渡る天上の青。
雲の流れも穏やかで、日差しが柔らかく暖かい。元就は校内で一番空に近い場所に来て、昼食を摂っていた。
勿論、傍らには慶次が居る。
「いや〜、しっかし行動が早いねぇ。さすがナリちゃん。」
言葉だけ聞いていたら、感心している様にも取れるが、少々戯け口が含まれていた。
「…あれは、事故みたいなモノだ。我とてあの二人が、あんなに早く行動するとは思わなかった。」
「ふ〜ん。……で?どうだったの?」
慶次が、にやにやしながら元就の方へ身を乗り出す。
「…何だ?気味の悪い。」
「も〜、とぼけちゃって。」
慶次は内緒話をする仕草で、元就の耳許に顔を近付け、小声で囁いた。
「どっちが良かった?」
「!ぶっ!ごほっ…!」
直接的な問い掛けに、元就は食べていた“まつ特製焼きプリン”を吹き出しかける。
「あっ!ゴメン!大丈夫?」
慶次は慌てて元就の背中を摩り、ハンカチを渡した。
元就は、涙目になりながら、ハンカチを受け取り口許に当てる。荒れた息を整えながら、あの日慶次に言われた事を思い出していた。
慶次に好きな人が居ないのかと聞かれ、自分の二人の幼馴染みの名前を言った日。
「どちらがより好きなのか分からないし、選ぶ事も出来ない。」
そう元就が言うと、慶次は…。
「じゃあ、さ。身体の相性で決めたら?」
と、あっけらかんと言い放った。
「……。な、何を…!?」
漸く言葉の意味を理解出来た元就は、顔を赤らめる。が、慶次は以外と真剣な表情をしていた。
「いや、だってさ、結局行き着く先はそこでしょ?だったら…ねぇ?」
何が“だったら”なのかは分からないが、慶次の言う事も一理ある…かも。と、元就は考え直す。
「だが…、最近は付き合いも無いし…。確かめるにもどうしたら良いのか…。」
「あー、それなら大丈夫。」
「…?何故だ?」
「俺といちゃ付いてたら、絶対向こうからリアクションかけて来るから。」
その自信が一体何処から来ているのか…、慶次は胸を張って言い切った。
そんな都合良くいくのだろうか?と、元就は疑問に思ったが、それから数日後に本当に二人から接触して来た。
そして抱かれはしたのだが…。
「よく分からぬ…。」
結局、元就が出した答えは以前と変わらないものだった。
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