裏黒 | ナノ



晴れ渡る天上の青。

雲の流れも穏やかで、日差しが柔らかく暖かい。元就は校内で一番空に近い場所に来て、昼食を摂っていた。

勿論、傍らには慶次が居る。

「いや〜、しっかし行動が早いねぇ。さすがナリちゃん。」

言葉だけ聞いていたら、感心している様にも取れるが、少々戯け口が含まれていた。

「…あれは、事故みたいなモノだ。我とてあの二人が、あんなに早く行動するとは思わなかった。」

「ふ〜ん。……で?どうだったの?」

慶次が、にやにやしながら元就の方へ身を乗り出す。

「…何だ?気味の悪い。」

「も〜、とぼけちゃって。」

慶次は内緒話をする仕草で、元就の耳許に顔を近付け、小声で囁いた。

「どっちが良かった?」

「!ぶっ!ごほっ…!」

直接的な問い掛けに、元就は食べていた“まつ特製焼きプリン”を吹き出しかける。

「あっ!ゴメン!大丈夫?」

慶次は慌てて元就の背中を摩り、ハンカチを渡した。

元就は、涙目になりながら、ハンカチを受け取り口許に当てる。荒れた息を整えながら、あの日慶次に言われた事を思い出していた。








慶次に好きな人が居ないのかと聞かれ、自分の二人の幼馴染みの名前を言った日。

「どちらがより好きなのか分からないし、選ぶ事も出来ない。」

そう元就が言うと、慶次は…。

「じゃあ、さ。身体の相性で決めたら?」

と、あっけらかんと言い放った。

「……。な、何を…!?」

漸く言葉の意味を理解出来た元就は、顔を赤らめる。が、慶次は以外と真剣な表情をしていた。

「いや、だってさ、結局行き着く先はそこでしょ?だったら…ねぇ?」

何が“だったら”なのかは分からないが、慶次の言う事も一理ある…かも。と、元就は考え直す。

「だが…、最近は付き合いも無いし…。確かめるにもどうしたら良いのか…。」

「あー、それなら大丈夫。」

「…?何故だ?」

「俺といちゃ付いてたら、絶対向こうからリアクションかけて来るから。」

その自信が一体何処から来ているのか…、慶次は胸を張って言い切った。

そんな都合良くいくのだろうか?と、元就は疑問に思ったが、それから数日後に本当に二人から接触して来た。

そして抱かれはしたのだが…。









「よく分からぬ…。」

結局、元就が出した答えは以前と変わらないものだった。

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