一
茜色だった空が、今は群青色に染まっている。
「…あっ、ンッ…!」
先程から自分を組み敷いている男の姿を通り越し、明日も晴れるだろうと、明後日の事を考える。
今、自分の置かれている状況が異常過ぎて、思考が追い付かなかった。
『…何で、こんな事に…?』
理由等、分からない。
今日の授業が終わり、何処に寄る訳でもなく、ただ家路についた。
何時もと違うところは、道路工事をしていたので、遠回りをしただけだ。
滅多に通らない道で、偶然この男に出会った。
背が高い、染めているのか銀髪の男だった。
珍しい風体だと、ちらりと男の方を見る。
「?」
モトナリは首をかしげた。
その男が、こちらを凝視していたのだ。
そして、近付いて来たかと思うと、そのまま腕を掴まれて寂れたこの廃寺に連れて来られ、
「んっ…あっ!…やぁ…!」
こうして、犯されている。
廃寺は屋根はあるが一部が崩れ落ち、空が見えている。
床も腐りかけているが二人が居るところはまだましなようだった。
こんな激しい動きをしていても崩れる様子は無い。
「モトナリ、モトナリ…。」
腰の律動を止めること無く、男は譫言の様に何度も名を呼ぶ。
初対面の筈なのに、何故名前を知っているのか…。
自分はこの男を知ら無い。
そう何度も言っているのに、聞き入られる事は無かった。
トップへ