五(モトチカ視点)
あの時代、戦国乱世と謳われた時代。
血を分けた肉親ですら平気で手にかける、そんな殺伐とした世の中でも自分達は、例え今生では結ばれなくても来世で想いは遂げられると、愛し合っているのだからと、ずっと、そうだと信じていた。
だが、
「…俺は、アンタが好きだったんだ…。」
絞り出すように、呟く。
転生してから、初めて再会した時、元就は女として生を受けていた。
再会した時、俺はやっぱり二人の運命は繋がっていたのだと、歓喜した。
しかし、
「…めでたい奴よな。何故、我が女に転生したか判るか?」
とても冷たく、尖った声。それだけで、元就がこの再会を喜んでいない事が分かった。
「貴様から逃れる為よ…!」
憎々し気に歪む顔。
「…何…で…。」
余りのショックに、そう返すのがやっとだった。
「…何で?…何でだと!?」
元就は、信じられないといった、半ば呆れた表情を浮かべ、
「貴様が、我から全てを奪ったのであろう!!」
物凄い剣幕に、一瞬たじろぐが、意味が解らない。
「俺は…、何も…」
「…ふっ。確かに、あの時の貴様は無自覚であったな…。質の悪い…!」
「元就…。」
訳が解らなかったが、只、元就には嫌われたくないと、そう思って手を伸ばす。
しかし、
バシッ!
あっさりと、叩き払われた。
「…丁度良い。この際だ。あの時代、我が貴様の事をどう思っていたか教えてやろう…。」
俺はまだ、払われた手を呆然と見ていた。思考が追い付かない。
「我は…」
嫌な予感がする…。
「貴様自身が…」
言うな…。
「欲しい等と…」
聞きたくない…。
「思…「聞きたくない!!」
「…!きさ…!!」
気が付いたら、俺は元就の首を絞めていた。
「…元就…?」
腕の中の女は、ピクリとも動かない。
「元就!」
俺は只、只、泣いた。
「…俺は、アンタが好きだったんだ…。」
そこで思い付いた…。
「…あぁ、そうだ…。」
アンタが俺を忘れるまで、やり直せばいい…。
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