七(モトチカ視点)
愛していた、大切だった。殺されても構わないとまで想っていた。
それは、相手も同じ想いを抱いていると信じていたから…。
だがあの戦で、それは己の独り善がりだったと、思い知らされた。
突然の裏切りにあい、怒りに駆られた俺は、冷静さを失ってアイツに斬り倒され…、
殺された。
最期に見たのは、アイツの嘲った顔。それだけで、相手が自分をどう思っていたのか理解出来た。
その時の記憶を持ったまま、再び生を受けた俺は、アイツを捜して、捜して、やっと見付け出したのに、あの時の事を忘れていやがった。
怒りに任せて頬を張っていたら、恐怖に震えているアイツの姿が目に映り、どうしようもない支配欲が頭をもたげた。
許しを乞い、涙を流すその姿。あぁ、俺はこの顔が見たかったのかもしれない…。
そして、今日。
強引に犯して、啼かせた。
アイツの胎内は、昔と一緒で温かく収まりが良かった。
「ガキ出来たら、お前は一生俺のモンだな。」
と、恍惚とイキかけた瞬間、
「…図に乗るな…、
長
曾
我
部」
誰も知らない、昔の俺の名を呼んだ。
名を呼ばれ、悦びに身を震わす。
物凄く滑稽だった。
裏切られたのに、こんな事で悦べるのだ俺は。
コイツの事が好きで堪らない。
『絶対に離さねぇ…。』
畳に組敷いた相手を抱きながら、ひっそりと誓った。
終
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