裏黒 | ナノ



見渡す限りの荒野。

硝煙が立ち込め、辺りにはかつて人であった者達が様々な形で倒れ伏している。

視界に映る限り立っているのは、己のみのようだ。

ふと、足元に視線を移す。銀髪の、大柄な男が怒りに満ちた表情で事切れていた。

“何故…”

男が、生前口にした言葉を思い返す。

“何故、裏切った!!”

甘い男だったと鼻で笑った。

情を交わし、身体を交わした位でよくここまで信用出来たものだと、逆に感心する。

「愚かな男よ…。」

男の髪を掴んで、首級を取る時も、取ってソレを眺めても、何の感情も産まれなかった。

















風が頬を優しく撫でる。

目を開けると、風に吹かれて緩やかにカーテンがたなびくのが見えた。

「…うん?」

何か夢を見ていた気がするのだが、思い出せない…。

「……!」

徐々に頭が冴えてきて、自分の身に何が起こったのか思い出した。

「あ…。」

恐怖に震え、思わず自分の身体を抱きしめる。

最後には自分から求めていたのを思い出し、その浅ましさに、涙が流れた。

「目、覚めた?」

ベットのカーテンを開け、保健医が顔を出す。

「あっ、ハイ…。」

慌てて涙を拭き、平静を装う。

「貴女、急に倒れたらしくって運ばれて来たのよ。顔色も良くなったわね。でも、今日は大事をとって帰りなさい。担任の先生には連絡しといたから。」

矢継ぎ早に言われる。

「…はい。」

返事をして、ベットから降りようと床に足を付けた時、腰に鈍い痛みが走った。

アレは夢じゃなかったと、思い知る。

「…お世話かけました…。」

と、外に出て驚愕した。

「!」

「よう…、鞄、持って来てやったぜ。」

あの男が待っていたのだ。

「あ…」

立ち竦んでいると、腕を掴まれ強引に歩かされる。

「家まで送ってってやるよ。」

「!」

男の笑顔が、不気味に映った…。






























アパートに着き、そのまま畳に突き倒される。

「!いっ…た」

そして衣服を剥がされ、無理矢理挿入された。

「!んン〜〜!!」

学校と違い、ここでは声が筒抜ける。制服の端を噛んで声を堪えた。

今、自分を侵食しているのは恐怖だけ。犯されているのとは違う類いの恐怖だった。

『アパートの場所、教えてない…!』

勿論、独り暮らしだとも言っていない。

生徒手帳でも見られたのかとも思ったが、転校して来てまだ一月も経たないのに、ここ界隈に明るい筈がない。

そこで、一つの結論が出た。












最初から、この男から逃げる術など無かったのだ…。














「ふぅん…」

自分を揺らす男に身を任せながら、静かに絶望に涙した。

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