裏黒 | ナノ

十八

慌てて手を放そうとするが、長曾我部の腰は止まらずに進んで来る。

そのせいで、更に痛みに襲われて、つい力んでしまい、手を放す事が出来ない。無意識の内に、次々と新しい爪痕を作っていく。

「……息、吐け」

少し苦しそうに、長曾我部が囁いてきた。

「……ふ、ぅ…ん」

今のこの状況を早々に終わらせる為には、相手に合わせるのが一番だと判断して、元就は何とか息を吐き出す。

「は…ぁ…」

「良い子だ…」

それで弛緩されたのか、長曾我部の動きが若干滑らかになり、暫くして止まった。

どうやら、元就の中に収まったらしい。

「……動くぞ」

そう言って、ゆっくりと抜き差しし出す。

そして、次第に淫猥な水音が出始めるが、元就が其処に感じている痛みは変わらない。

『……っ!吐、き出させるまでの…辛抱…よ…』

先程まで感じていた快楽が、腰を打ち付けられる度に、どんどん削ぎ落ちていく。

その最中、一際深く貫かれた時に、ブチリと膣内で何かが切れた様な感触がした。

「いっ……ぅ!」

破瓜の痛みが上乗せされ、そして、痛さが勝った途端、曖昧だったあの感覚が、一気に鮮明になる。

元就は、長曾我部に初めて触れられた時以上の、気持ち悪さを感じていた。

繋がっている部分から、ゆっくりと泥濘に浸されていく……そんな感覚を。

「う、くぅ……」

それが痛さと相俟って、相当に身体が辛い。それに耐える為、ぐっと唇を噛み締めた。

「……まだ痛いか?」

そんな元就の姿を見た長曾我部が、気遣う様な言葉を掛けてくる。

「い…いから、早く…終わらせ、て…っ!」

ここまできて、何故そんな態度を見せるのか、と元就は急に腹立たしくなり、ついぞんざいに返してしまう。

「…そうか…分かったよ」

そう言うや否や、長曾我部は、先程よりも激しく腰を打ち付けてきた。

「うっ…!くぅ…んン!!」

それを受け止めていく内に、痛いながらも限界に近付いてきたのか、陰茎を締め付ける力が強くなる。

「あっ……!あっあっ!」

「くっ……!」

長曾我部が、自身をギリギリまで抜き出し、そして一思いに奥まで突き入れた。

「ひっ!やっ…あぁ…!」

脳天まで貫かれた様な、激しい感覚に身体が痙攣を起こす。

そして、長曾我部のモノが埋まっているその先に、何か熱いものが当たるのを感じた。

「……え?」

まさかと思い、視線を繋がった部位に向ける。

ゆっくりと抜かれていく長曾我部の陰茎には、何も着けられていなかった。

早く終わらせようと、そればかり考えて失念していた。

自分にも責任はある。

だが……。

「な、中に……」

「ああ、出したな」

だから?と、悪びれも無い態度で長曾我部が答える。

「……!!」

元就は、考えるよりも先に、長曾我部の頬を張っていた。

「……帰る」

暫しの沈黙の後、元就はそれだけを言うと、床に投げ散らかされていた、自分の衣服を取る為にベッドから降りようとする。

無駄だと思っていても、とにかく中に放たれたものを、一刻も早く洗い流したかった。

だが、長曾我部に手首を取られ、ベッドに引き倒される。

「何を…!」

「何で帰るんだ?」

その行為に対して、抗議しようとしたが、相手が殊の外真剣な表情を見せていたので、元就は思わず視線を反らす。

「何でって……」

「家族が心配するから?」

元就が答えるより先に、長曾我部が言う。

「そ…う」

それに適当に合わせようと、返事をしかけた時……。

「誰も居ないのに?」

と、即座に返された。

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