十七
「……往生際、悪いんじゃねえ?」
その行動に対して、当然だが、長曾我部の声音は少々苛立ったものになる。
「あ、足音が聞こえた気がして…」
今感じた事を言って、訝しがられるのも嫌なので、元就は咄嗟に、そんな嘘を吐いた。
「誰か、帰って来たのかと…」
「……お袋とか?」
「そう…なのか?」
玄関から見ただけだが、ファミリー向けのマンションだけあって、独り暮らしをするのには広過ぎる。
当たり前に、家族と住んでいると思い、出た言葉だったが、何やら不穏な空気が流れていた。
暫くの間、沈黙が続き、重苦しい空気の中、長曾我部が口を開く。
「…今、親父と二人暮らしで、その親父も冬まで帰らないって、ここ来る途中話したよな」
顎を掴まれ、強引に視線が合う位置へと向かされる。
長曾我部を包んでいた靄は、いつの間にか消えていたが、姿がはっきりした分、元就は、その瞳に射竦められ、畏縮していた。
あの時、きちんと聞いていれば…。と、今更ながら後悔する。
「お前、本当俺に興味無いのな」
長曾我部は、半ば自嘲気味に、そう吐き捨てた。
顎を掴んでいない方の手が、女陰に触れ、指が入り口を弄ぶ。
「あっ…」
そして、膣内(なか)に捩じ込まれた。
「うあっ…!」
指は、恥骨の下にある、小さな窪みの中を動き回り、室内には淫猥な水音が鳴り続ける。
「いッ…あっ…うぅん!」
いじられている箇所から、何かが迫り上がって来る様な、そんな感覚が元就を襲う。それは、尿意に似た物であった。
「や、…出るッ…!」
必死に押し留めようとするが、堪えきれず、あわやと云うところで、指が抜かれる。
「……ひっ!」
そして、間髪入れずに、指よりも数段太く、且つ凶悪な楔を打ち込まれた。
「痛っ…!」
その熱く、硬いモノが、無理矢理に膣内を進んで行き、肉が軋む。
実際には、痛いという言葉すら生温く感じる程の、かなりの激痛が走っていた。
『裂け…る…!』
「痛ぇか?可哀想にな…」
長曾我部は、同情する風な言葉を掛けてくるが、腰の動きを止める気配はない。
目尻に溜まった涙を、舌で拭われた。すると、あの嫌悪感が少しだけ戻って、ぞわりと肌が粟立つ。
「んン…!」
奥へと容赦無く侵入されて行く内に、本当に裂けてしまったのか、血の臭いが元就の鼻を掠める。
「つっ…!」
すると、長曾我部が短い唸り声を上げた。
「…?」
……血の臭いは、近くからする。
そう気付き、よくよく見てみると、自分の手が縋るものを探して、無意識に、長曾我部の背中を掴んでいた。
爪を立てていたのだ。
そして、爪の間の異物感に、相手の背中を強く引っ掻いたのだと理解した。
トップへ