十六
暫くして、その手は、太股の内側に進み、足の付け根へと辿り着く。
そして、股座にある一番敏感な部分に指を当ててきた。
「!…んっ…」
思わず驚きの声を出し掛けたが、長曾我部の唇に塞がれ、無理矢理押し込まれる。
「ふぅ…んンっ…!」
それから、掠める様に弱く、だが執拗に、布の上から陰梃(いんてい)をこすり続けられた。
「うぅ…ン!」
今まで、体験した事の無い、強い刺激に耐えられず、元就は、反射的に足を閉じようとする。だが、そうするより先に、相手の膝が邪魔をした。
長曾我部の舌が、口内を嬲っているせいで、息苦しい。頭を振り、唇を離そうともがくが、後頭部を押さえられていて、それも容易ではなかった。
口の端から、唾液が漏れる。
陰梃を掠めていた指の力が、段々と強くなり、今度は其処を押し潰しながら、円を描く様に動く。
「あっ!ンぐ、くぅっ…!」
次々と襲ってくる快感に、元就は、言葉にならない声を上げるが、口が開く度に、相手の舌が奥へと入り込み、呼吸を奪われる。
そして、長曾我部が、指をずらし、ショーツの上から女陰をそっと撫でた。
「ん…ッ!」
軽く触れられただけなのに、布が其処に張り付いて離れない。相当に濡れているという事を、嫌でも自覚する。
「…気持ち良いか?溢れてるぜ…此処」
「かはっ…コホッ…!」
やっと唇を離されたが、酸欠状態の元就は、上手く思考が働かず、長曾我部の嘲弄に、言い返す事も出来ない。そして、矢継ぎ早に与えられる刺激に、身体も着いていけずにいた。
まだ呼吸が整わないと云うのに、指の背中で脇腹を一撫でされ、続いて胸を揉まれる。それから、二の腕を持ち上げられたかと思えば、相手の舌が脇の下へと滑り込んだ。
「あ、あぁっ…!」
擽ったさに身を捩る。
そして、変わらず嬲られ続けていた陰梃から、不意に手が離れ、ベルトを外す音と、ジッパーの摩れる音が聞こえた。
次いで、ショーツを脱がされる。
そこから続く行為を想像し、元就は身構え、更に強く目を瞑った。
だが、長曾我部は其処には触れてこずに、今度は内太股を舐め出す。
「うっ…あんっ…」
そして、手は再び胸を弄り始めた。
長曾我部の手が、舌が、身体中を蹂躙する。
「あぅ…やっ、あぁン…!」
目を瞑っている為に、相手の動きが予測出来ず、元就は、ただ翻弄されるだけであった。
「見えてねぇと不安だろ?」
長曾我部の息が、耳に掛かる。
「目ぇ開けろよ」
未だ、思考がぼんやりとしたままの元就は、その言葉に素直に従い、ゆっくりと瞼を上げた。
「……!」
眼を開けた途端写ったのは、黒い靄を身に纏った男の姿。
『これは、あの時と…』
昨日の誰彼刻を思い出した刹那、元就の中に、言い知れぬ不安が生じる。
まだ、目が光りに慣れていないからだと思い込もうとするが、明らかに異様である。以前よりも、もっと朧気な…、まるで人形(ひとがた)の虚空が有る様に見えた。
『……なら…ぬ、落ち着け…。ここでの良策は、疾く終わらせる事ぞ…』
そう自分に言い聞かせ、何とか気持ちを鎮めようと努めるが、その思いとは裏腹に、気付けば相手の肩へと手を遣って、押し退ける態度を取っていた。
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