十五
その手は、頭を優しく撫で、静かに髪を梳く。
取っていた手は、互いの掌を合わせ、そっと、シーツの上に押し付けられた。
長曾我部の顔が近付き、額に軽く口付けをされ、次に瞼へと移動する。
そして、元就の唇と重なった。
「ん…むぅ…」
長曾我部の舌が歯列を割り、元就の舌へと絡んでくる。髪を梳いていた手は、今は耳の後ろを、物柔らかに撫でていた。
「あ…はぁ…」
息が出来るようになり、緊張して固くなっていた身体も、少し解れたみたいで、浅い呼吸を繰り返す。
その間にも、落ち着かせようとしているのか、長曾我部は愛おしむ様に、何度も、元就の額や頬に唇を落としていた。
呼吸が楽になり、心に少しばかりの余裕が生まれれば、同時に疑問も生じる。
『…何故、愛おしむ真似事までして、厭わしい相手を抱こうとするのか…』
元就は、長曾我部が自分を組み敷く理由を、未だに理解出来ずにいた。
そう考えている間に、ブラウスの最後のボタンを外され、リボンも抜き取られる。
「あっ…」
そして、元就の首筋を舐(ねぶ)っていき、鎖骨に軽く歯を立ててきた。
それから、背中に手を回して、ブラのホックを外す。その手が、下から乳房を持ち上げ、軽く揉む。
「うぅ…ン」
そして、乳首を口に含み、尖らせた舌先で、何度も形を確かめる様に舐め回す。
「あっ!やぁっ…」
その刺激で、身体が過剰に反応し、弾みで顔を上げると、胸元が視界に映る。そこで見えたのは、丁度、もう片方の乳首を摘ままれるところであった。
長曾我部の髪が、鼻を掠めて擽ったい。更にそこへ、新たな刺激が加わる。それが相乗効果となり、急速に、羞恥心が沸き上がってきた。
「っ…!」
自分が性交している姿を見たくない元就は、咄嗟に目を瞑る。
視覚を閉じた事で、聴覚が研ぎ澄まされ、ぴちゃり、と胸を舐める音がいやに耳に付く。だが、瞼を上げる気は起こらない。
「…目ぇ、開けろよ」
それに気付いた長曾我部が、不機嫌な声を出す。
「ちゃんと見とけ」
首筋に手を回され、無理矢理顔を起こされるが、元就は首を横に振る。
小さな舌打ちが聞こえたと思ったら、スカートを捲られた。
筋くれ立った無骨な手が、太股の上を行き来する。
「んンっ…!」
触れられる度に、肌がざわつくが、これは嫌悪感から来ているのか、それとも、快感からなのか、元就は分からなくなり始めていた。
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