裏黒 | ナノ



『少し遅くなったか…。』

人気の無い廊下を歩きながら、元就は腕時計を確認する。

日直だった今日、最後の六時限目で化学の実験をし、その後片付けを1人で任されたのだ。

『全く人使いの荒い…。』

鞄を取りに教室に入る。

「!」

扉を開けて驚いた。

「…よう、遅かったな…。」

左目に眼帯を付けた銀髪の幼馴染みが言う。

「…ホント、待ちくたびれたぜ、ナリ。」


右目に眼帯を付けた黒髪の幼馴染みが言う。

「…え?何で?」

予想していなかった出来事だったので元就は動揺を隠せない。

「おいおい、何で?は無いだろ?なぁ政宗…。」

「ホントにな…。」

「お前を待ってたんだぜ…。」

穏やかな口調だが、元就は何故か、2人が怖いと思った。

それに、今まで帰りを待っていた事なんて一度も無かったのに…。

「…今日からお前ん家、誰も居ないんだろ?」

母親同士の会話で出てきたのだろうか?

確かに今日から父親が海外出張で、母親もそれに付いて行く。


「Ah 〜、1人じゃ物騒だろ?俺ン家来いよ…。」

政宗は昔から母親との折り合いが悪かったので、高校に入った時からマンションで一人暮らしをしている。

「…でも…。」

「鞄持ってやる。」

「OK、行こうぜ、ナリ。」

「!」

2人が近付いて来て、何故恐怖を感じたのか分かった。

笑顔なのに、目が笑っていない…。

嫌な予感がする…。

出来る事なら逃げ出したいが、元親が掴んでる腕の強さと、政宗の眼光の鋭さが諦めを選択させた。







校門を出ると、黒塗りの高級車が停まっていて、その中に強引に押し込まれた。

自分は今からどうなるのだろう…。

元就は只、窓の外を流れる景色を見ていた。

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