三
『少し遅くなったか…。』
人気の無い廊下を歩きながら、元就は腕時計を確認する。
日直だった今日、最後の六時限目で化学の実験をし、その後片付けを1人で任されたのだ。
『全く人使いの荒い…。』
鞄を取りに教室に入る。
「!」
扉を開けて驚いた。
「…よう、遅かったな…。」
左目に眼帯を付けた銀髪の幼馴染みが言う。
「…ホント、待ちくたびれたぜ、ナリ。」
右目に眼帯を付けた黒髪の幼馴染みが言う。
「…え?何で?」
予想していなかった出来事だったので元就は動揺を隠せない。
「おいおい、何で?は無いだろ?なぁ政宗…。」
「ホントにな…。」
「お前を待ってたんだぜ…。」
穏やかな口調だが、元就は何故か、2人が怖いと思った。
それに、今まで帰りを待っていた事なんて一度も無かったのに…。
「…今日からお前ん家、誰も居ないんだろ?」
母親同士の会話で出てきたのだろうか?
確かに今日から父親が海外出張で、母親もそれに付いて行く。
「Ah 〜、1人じゃ物騒だろ?俺ン家来いよ…。」
政宗は昔から母親との折り合いが悪かったので、高校に入った時からマンションで一人暮らしをしている。
「…でも…。」
「鞄持ってやる。」
「OK、行こうぜ、ナリ。」
「!」
2人が近付いて来て、何故恐怖を感じたのか分かった。
笑顔なのに、目が笑っていない…。
嫌な予感がする…。
出来る事なら逃げ出したいが、元親が掴んでる腕の強さと、政宗の眼光の鋭さが諦めを選択させた。
校門を出ると、黒塗りの高級車が停まっていて、その中に強引に押し込まれた。
自分は今からどうなるのだろう…。
元就は只、窓の外を流れる景色を見ていた。
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