七
「元就。今日ウチに泊まっていかないか?」
帰り道、突然元親に言われた。
「泊まり?」
急な誘いの為、思わず聞き返す。すると元親は、“今日、ウチ誰も居ないから。”と微笑みながら答えた。
「独りじゃ寂しいじゃん?」
とも。
冗談なのか本気なのか分からないが、手紙も渡さないといけないし、何より元親の家に行くのは随分久し振りだと思い元就は承諾する。
階段付近で聞いたあの言葉は、空耳だったのかもしれないとも思い始めていた。
「お邪魔します。」
「そう畏まらなくても良いぜ。」
帰る途中に家に電話をし、元親の家に泊まる旨を伝えておいた。
『余り変わってないな。』
久し振りの状景に、やや心が高揚する。
二階に上がり、元親の部屋に通された。
そこは、昼間なのに遮光カーテンを使っているのか、真っ暗だ。
「今、明かり点けるから。」
そう言って、元親はスイッチに手を伸ばした。
「?」
何か音が重なって聞こえた様な気がしたが、気にせず久方振りの元親の部屋を見渡す。
と……。
「!」
初めは壁紙かと思った。
久し振りの元親の部屋で、一番初めに見たものは…。
自分。
正確には、壁一面自分が写った写真に埋め尽くされていた。
「何…だ…これは…。」
驚きすぎてか、息が苦しい…。
よく見ると、写真に写っている自分の目線は、全て外れていた。
つまりは、隠し撮り。
「日の光り当てるとな、色褪せるから何時もカーテン閉めてんだ。」
的を外した台詞に振り向く。
視界に映ったのは、何時も見せる優しい笑みを携えた幼馴染みだった。
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