裏黒 | ナノ



耳に届く小鳥のさえずり。目蓋に当たる光りに、夢境から現に意識を戻される。

元就が目を開けると真っ先に見えたのは、朝日に照らされて虹色に輝く銀糸であった。

『…。あのまま眠ってしまったのか…。』

元就に抱き付き、胸元に顔を埋めて眠っている幼馴染みを見て、一つ溜め息を吐く。

昨夜、突然家に来たかと思ったら、そのまま強引に泊まられた。

理由は“期末テストが近いから、勉強を教えて欲しい。”というものだった。

それを聞いた時元就は、

『何時も十番以内に入る成績のくせに…。』

と思ったが、口には出さなかった。

最近元親は、元就と一緒に居たがる。

それ自体は構わないのだが、何故かやたらと身体に触れてくるのは、やや抵抗があった。

「元親…。」

自分の胸元を枕代わりに眠っている幼馴染みの名を呼ぶ。

「…ん〜〜?」

一応返事はするものの、まだ頭は覚醒していない様だ。

「起きろ、元親。朝だぞ。」

元就は再度呼び掛ける。

「…う…ん?」

やっと目が覚めてきたのか、額を左右に動かして元就の胸元に擦り付けながら目を開けた。

「あ…元就。おはよう。」
目が合って、寝ぼけ眼の笑顔で挨拶をしてくる。

「起きた様だな。さっさと退け。」

未だに自分に抱き付いたままの元親に言うが、壁に掛けてある時計の針を見た元親はごね出した。

「まだ早いじゃん。もう少しこのまま…。」

と言い、又元就の胸に顔を擦り寄せる。

「そんなに寝ていたかったら、一人で寝ておれ!」

いい加減痺れを切らした元就に怒鳴られ、元親は渋々起き上がった。

「…ちぇっ。ケチ。」

拗ねながらも、着替える為にベッドから下りる。

「誰がケチだ!」

「いいじゃん。元就の胸枕気持ち良いぜ?」

冗談なのか、本気なのか分からない台詞を返された。

「きっ…!阿呆か!」

正直、リアクションに困る…。だからなのか、気が付けばどうでもいい話題を振っていた。

「…最近、曜日に関係無くウチに泊りに来るが…彼氏は放って置いて良いのか?」

元親には、入学式の時から付き合っている同級生の彼氏がいて、よく週末など泊まり掛けで出掛けてたりしていた。

だが、ここ最近元就の所ばかりに来る。

「あー、アイツな…。別れた。」

元親は、面白くなさそうにそれだけを言って制服に着替え始めた。

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