二
耳に届く小鳥のさえずり。目蓋に当たる光りに、夢境から現に意識を戻される。
元就が目を開けると真っ先に見えたのは、朝日に照らされて虹色に輝く銀糸であった。
『…。あのまま眠ってしまったのか…。』
元就に抱き付き、胸元に顔を埋めて眠っている幼馴染みを見て、一つ溜め息を吐く。
昨夜、突然家に来たかと思ったら、そのまま強引に泊まられた。
理由は“期末テストが近いから、勉強を教えて欲しい。”というものだった。
それを聞いた時元就は、
『何時も十番以内に入る成績のくせに…。』
と思ったが、口には出さなかった。
最近元親は、元就と一緒に居たがる。
それ自体は構わないのだが、何故かやたらと身体に触れてくるのは、やや抵抗があった。
「元親…。」
自分の胸元を枕代わりに眠っている幼馴染みの名を呼ぶ。
「…ん〜〜?」
一応返事はするものの、まだ頭は覚醒していない様だ。
「起きろ、元親。朝だぞ。」
元就は再度呼び掛ける。
「…う…ん?」
やっと目が覚めてきたのか、額を左右に動かして元就の胸元に擦り付けながら目を開けた。
「あ…元就。おはよう。」
目が合って、寝ぼけ眼の笑顔で挨拶をしてくる。
「起きた様だな。さっさと退け。」
未だに自分に抱き付いたままの元親に言うが、壁に掛けてある時計の針を見た元親はごね出した。
「まだ早いじゃん。もう少しこのまま…。」
と言い、又元就の胸に顔を擦り寄せる。
「そんなに寝ていたかったら、一人で寝ておれ!」
いい加減痺れを切らした元就に怒鳴られ、元親は渋々起き上がった。
「…ちぇっ。ケチ。」
拗ねながらも、着替える為にベッドから下りる。
「誰がケチだ!」
「いいじゃん。元就の胸枕気持ち良いぜ?」
冗談なのか、本気なのか分からない台詞を返された。
「きっ…!阿呆か!」
正直、リアクションに困る…。だからなのか、気が付けばどうでもいい話題を振っていた。
「…最近、曜日に関係無くウチに泊りに来るが…彼氏は放って置いて良いのか?」
元親には、入学式の時から付き合っている同級生の彼氏がいて、よく週末など泊まり掛けで出掛けてたりしていた。
だが、ここ最近元就の所ばかりに来る。
「あー、アイツな…。別れた。」
元親は、面白くなさそうにそれだけを言って制服に着替え始めた。
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