一
学生としての一日の本分を終え、すっかり人が居なくなった教室で、長曾我部元親は自分の席に座り、一冊の雑誌を眺めていた。
「……。」
悪友が、
[hey!チカ、この雑誌の33ページ見てみな!]
と言って渡してきたモノだ。
『選りに選って、エロ本かよ…。』
そこに飾られている女達は、惜し気もなく肌を露出し、扇情的なポーズをとっている。
その中の一人、悪友が“見ろ”と言っていたページに写っている女を見て、軽く時間が止まってしまった。
ガラガラ!
「!!」
元親の止まっていた時間が、扉を開ける轟音に則され再び動き出す。
誰だと思って扉の方を見たら、このクラスの風紀委員、毛利元就が入って来るところであった。
元就は、元親を一瞥して何故か一瞬顔をしかめる、そして、近付いて来た。
「…?何だ?」
元親の問いには答えず、元就は勢いよく元親の手から雑誌を取り上げる。
そして…。
「ちょ…、お前!」
元親が止める間も無く、雑誌をびりびりに破られた。
「何て事してくれてんだ!」
一応借りモノなので、つい、元親は大声を出してしまう。
「…ふん。神聖な学舎で、その様な卑猥なモノを読んでいる方が悪い。」
凡人なら即、震え上がる元親の怒号を軽く往なして、元就は軽蔑の視線を投げてきた。
「あ〜あ、俺の今夜のオカズが…。」
「下衆が…!」
元親の言葉に、元就は遠慮なく不快をぶつける。
「…トコロでよう、毛利…。」
「…何だ?」
「お前、処女だろ?」
元就の顔が、一瞬で赤くなった。
「なっ…!き、貴様何を…!」
その反応を見て、元親は図星だと確信する。
「…まあ、そうだろうな、誰も居ない教室で、あんま素行が良くない俺に一人で突っ掛かって来てんだもんなあ…?お前、男の怖さ知らねえだろ?」
ゆっくりと立ち上がった元親に、悪い予感を覚え、元就は逃げようとしたが…。
「遅えんだよ。」
それは叶わず、手首を掴まれてしまった。
「な、何をするつもりだ?」
元親を睨み付け、元就は問う。
『…震えてるクセに気丈なモンだ。』
「俺、あの雑誌で結構煽られてたんだよなあ…、でもお前が破っちまったし…、だからよう、代わりに…。」
元親は、にやけながら元就を抱き締めて、
「…お前で処理すんだよ。」
と元就の耳元で囁いた。
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