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「サキーラちゃんをこいつに!後で感想聞かせろよ!」


そういってクソ上司はカクを娼館の一室に押しこんだ。
あでやかな雰囲気を醸し出す部屋のやたらと大きなベッドに腰掛けて考える。
さて、どうしたものか。

上司が金をカウンターに積んでいたし、奢りは奢りなのだろう。
さすがにここまで無理やり連れてこられて自腹を切れと言われていたらきっと上司といえど蹴り飛ばしていた。
相手が…イイ女なら抱いてもいいか。最近はご無沙汰じゃったし…。

コンコン

「サキーラだ。失礼するよ」
「うむ」

カウンターで聞いた名前を名乗る女性。
声は高くはない。女性にしては低めで落ち着いた声。
想像するのはロングの髪のグラマーな女性。

程なく開けられた扉からのぞいたのは、毛の生えた手だった。

「…え?」

ぱちりと目が合った。釣り目気味の金色の瞳。頭から延びる長い髪のような毛は白。
人とは違う毛に覆われた顔にはマズルが付いている。
胸元がざっくりと空き、スリットの入ったシースルーのロングドレスからはしっぽが見えている。全身が、毛に覆われている

「悪魔の実の能力者か…!」
「いいえ?…知らずに私を指名したの?」
「……ほとんど押し込まれたようなもんじゃ」

新世界なんて、手触りとかのことを言っていたのか。
ため息をついて項垂れるとその娼婦はカクに寄り添うようにしてそっとベッドに腰掛ける。
背の高いカクに負けない…むしろ少々大きい娼婦はカクの顔を覗き込む

「どうする?やめておく?」
「…うーむ」

悩むようにして娼婦を眺める。スタイルは、良い。すらりとした体に付いたほど良い大きさの胸と健康的な足。少しだけ肩に触れる。毛並みも悪くない、むしろずっと触っていたくなるような手触りの良さ

肩、腕、手と触れてから首に触れて、そのまま胸に触れる

毛に覆われてはいるがしっとりとしていて柔らかい。

…抱けなくは、ないか

「うむ、大丈夫そうじゃ」
「…あなたは分かってなさそうだから最初に見せておく必要がありそうね」

立ち上がった獣人がわしの正面に立ち、シースルーのドレスの中に手を入れ、下着を下した

「は?ちょっと何し……!?!?!?」
「私はハイエナのサキーラ。一つ賢くなったわね。ハイエナのメスには…疑陰茎があるのよ」

勃起はしていないものの、しっかりと立派なブツがぶら下っていた。

絶句し唖然とするカクに苦笑いを漏らし下着を履きなおして再び横に腰掛ける。
しぐさそのものは完全に女性だ。

…しかし、股に立派なブツがある。ということはもしや……
嫌な想像が頭をよぎり、汗が頬を伝う。

「…まさかと思うが、おぬし……抱く側、か?」
「その通り。私は抱く側。私はしっかりこれで気持ちよくなれる。それに精液も出ないから衛星的よ」

そういう問題じゃない
あの上司はわざわざ抱かれに娼館にいっていたのか…!?
とんだ嗜好を押し付けられたものだ。あの上司はやはり頭がおかしい。
どうしたものかと頭を抱える。
何もせずに出てきたとなれば、上司の機嫌を損ねかねない。しかし自分が抱かれるのは冗談じゃない。ハニートラップのようなものはしたことがあるが、ソッチは経験なしだ。
さて、どうしたものか

「おぬし、膣を作ることはできんのか」

名案だろう、と提案すればサキーラが肩をすくめて首を振る。

「できなくはないけど、それは"私が抱かれてもいい"と思った相手にだけ起きる生理現象よ」

その気配がないということは、カクでは役者不足、と。
男としての尊厳を馬鹿にされたような気分になって思わず口が尖る。
そのしぐささえ、サキーラは可愛いと微笑んで見せた。しぐさそのものは女性なのにそこはかとなく雄の香りがする。不思議な人物。

悩むカクを見かねてサキーラが足を組み頬杖を突きながらほほ笑む

「その気にすれば、抱けるかもね?」
「…手ぶらで帰るわけにはいかんし、しょうがないのう」

カクはあきらめたように、ため息をついてサキーラの頬に触れる。
つるりとした人の肌の手触りではない、つやつやとした手触りのいい毛。
頬を撫でながら口を寄せた

「…あなたの鼻、可愛いけどキスするには邪魔ね」
「お前こそ、わしと変わらんマズルを持っとるくせに」
「あら、ここの名称を知ってるのね、博識」
「…いいから目を閉じんか」
「はいはい」

目を閉じたその目は、長いまつ毛に覆われていた。






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