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2014/03/15



女体化で百合注意




「良、」
貴女に呼ばれる私の名前は、まるで私の名前じゃないみたいに甘美な響きを持って私に聞こえる。
はい、と応えればゆったりと微笑んで、彼女の長い指が私の前髪を掻き分けた。
真っ白なシーツの海に沈む彼女はその細い腰も、薄い唇も、切れ長の瞳を隠す瞼も、全部ぜんぶ桃色に染まっている。
こんなことをするのは初めてで、普段の私なら勝手が分からなておどおどして、きっと彼女にリードして貰ってただろう。
けど不思議なもので、私の指は驚くほど迷いなく、素直に彼女の肌へ触れている。
彼女の身体はどんな人でもこんな風にしてしまうのだろうか、まるで魔法のようだ。
誰かが触る彼女をほんの少しだけ想像してしまって、芽生えた嫉妬に首筋をかぷりと噛めば細い喉がひくりと動いた。
何をするにしても彼女は反応してくれて、嬉しくて彼女の耳たぶを口に含んだら、甘くて眩暈がした。
きっと彼女の肌はバニラで、髪はショコラで、唇はサクランボなんだ。
胸やけしてしまいそうなのに、もう私はそれ以外を口にすることは出来ない。
むしろ、その甘さで死ねたら本望なのにと浮かれた頭で思う。
その柔らかい乳房を掴めば、うっと詰まった声が漏れる。
私はその姿に身体の奥が熱く成って、なんとも言えない幸福感に満たされる。
私の指で貴女が乱れていくのが、どうしようもなく愛しいの。
けど同時に、罪悪感でいっぱいになる。
貴女はこんなにも繊細で、鮮麗で、今だって咲き誇るような、そんな美しさを持って私の目の前にいる。
私はどうだろう。今の私は欲に塗れるままに貴女を貪る獣だ。美女と野獣なんて、ぴったりじゃないか。
こんな汚れた私がこんな綺麗な貴女に触れるなんて気持ち悪いですよね、すみません。
自然と口から謝罪が溢れていく。
いつだってそう、私は謝ってばかりで、でももうこの行為を止めることなんて出来なくて。
きっと私はこのまま彼女の綺麗なところをひとつ残らず食べてしまうの。
そしてこの手に収めて、二度と離してあげられない。
ずるいですよね、すみません、すみません。
「ううん、良は汚くない」
それまで黙って愛撫を受け入れていた彼女が口を開いて、驚いて顔を上げれば、少し照れたように彼女はそっと唇を動かす。
「あのね、今日は良の生まれた日だから」
ああ、
「良にね、奪ってほしいの」
微笑む貴女の、なんて美しいこと!

滴るリリィの奪還
(さよなら純潔)



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