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2014/03/15



女体化でR15注意
愛の形を待っている。の続きですがこれだけでも読めます。




ねぇ、愛されるのって気持ち悪いんだよ。
掻き回される景色の中、ぼうっと心の奥でそう語りかけてみる。
きっと口にしたって、彼にその声は届かないんだろう。
だってあんまりにも必死で、怖い顔しているもの。
ぐるぐると、痛みと吐き気だけが私の頭を乱舞している。
あんまりにも瞳が揺れるから、涙と一緒くたになって落ちてしまいそうだ。
ううん、全部。全部揺さぶられて、ぐちゃぐちゃのシーツの上に溶かされてる。
ぺたんこの胸も痩せ細った足も染まっていく。
だらだらと、血が流れて、戻れないよなんて囁く。
正常な、清浄なものなんてひとつもない。
汚しちゃったんだ、それは彼だし、私でもあるけど。
「笠松、」
絞り出した名前はからからに渇いていたけど、笠松はちゃんと聞き取って手を握ってくれた。
私はそれに安心して、攣りそうな爪先から力を抜いて笑ってみせた。
なのに笠松は苦い顔をしている。しょうがない、のかな。
「笑ってよ」
自分でも呆れちゃうような我侭に、笠松は無理だって応える。
「だよ、ね」
私だって笑えないかもしれない。
けど、きっと彼はよりは余裕だ。うん、大丈夫。
なんて精一杯の言い訳は、軽い振動に打ち消される。
「千切れちゃう、かも」
思わず漏れた本音に、私を捕える手がぴくりと跳ねる。
温かくて、逞しい手のひら。その熱を知っていたのに。
「森山……」
嗚呼、彼の声すら、嗄れている。
酷いことをしているんだ、私たち。
「名前、呼んで」
一瞬、ちょっと、少しの間をおいて聞こえてきたそれは儚げで臆病だ。
彼がこんな風に弱くなれるのは、私のせいなんだよね。
「あのね、幸男」
混ざり合った涙ごと彼を抱きしめて、腫れぼったい瞼にキスをする。
「ずっとずっと、夢見てたの」
ひとつにならないこの醜さを感受して、吐き出す。
繰り返し汚れていく。
現実はそんな風に見えるけど、私には違って映るんだ。
たとえば、笠松が今どんな気持ちでいるかなんて、私しか分からないように。
こんなに皺くちゃに歪んでるけど、ねぇ。
「だいすき、なの」
怖くても痛くても気持ち悪くても、どうしようもなく、これは愛なんだよ。

幾千にも幾万にも、君を愛す。



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