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2014/03/15



緑高




とても、小さな声で意識が浮上していく。
瞼を押し上げた先にチカチカと光るディスプレイを耳に押し付けてる真ちゃんを捉える。
視線を時計に移すと午前3時、こんな時間に電話かよ。
まあ、彼がこんな夜中にわざわざ電話に出るってことは、相手はキセキの世代の誰かで間違いないわけで。
少し、苛立たしい。
どうせだから盗み聞きしてやろうかなと彼の方へ寝返りを打った拍子にげほっ、と渇いた喉から息が溢れる。
あれ、ちょっと気管が、
詰まった呼吸がごほごほと零れてくる。
ヤバ、止まらないんだけど。
気づかれないよう身体を丸めて口を塞いだけど、肩が揺れてしまう。
ああ駄目だって、邪魔しちゃ悪いのに、なんて。
嘘、本当は少しだけ気付いて欲しい。
そんな薄っぺらい機械の向こうより、ずっと近くにいるでしょ。
ねぇ真ちゃん、苦しい。
本格化してきた呼吸困難。
とりあえず水飲も、水。
そう思い起き上がろうとしたとき、背中に触れる体温に、動きが止まる。
ゆっくりと上下に摩ってくれてるこの手の正体は真ちゃんしかありえなくて、ぜえぜえと煩い肺を抑えながら見上げると柄にもなく心配そうな瞳が硝子越しにこっちを見てて、今度こそ呼吸が止まるかと思った。
何だよ、そんな顔すんなよ。狡いじゃんそれ。
そのまま動けずにいるとふい、と視線を逸らされた。
もっと顔が見たかったのに、残念。
それでも、背中の手は離れることはなかった。
遠慮がちというよりは慣れてない、不器用な手のひら。
にやける頬を抑えきれなくてくくっと笑うとまた咳が漏れた。
「高尾、」
何時の間にか通話を終わらせた真ちゃんが呼んだ俺の名前が、久し振りに感じる。
「し、んちゃん、」
「喋るな」
「大丈夫、咳、止まったし」
「水はいるか」
「いるー」
真ちゃんは頷くと自ら水を含んで、唇で俺にくれた。
真ちゃんのこういう恥ずかしいとこ、嫌いじゃない。
「落ち着いたか?」
「ん、あんがと」
「まったく驚かせるな」
「あはっ、ごめんごめん!」
背中に回ってた腕が上がってきて髪を撫でる。
心地良くて目を細めたらやっと彼から肩の力が抜けたように見えた。
「お前が変に隠そうとするから気付くのが遅れたのだよ」
「だって電話してたでしょ」
「だからなんなのだ」
「え、いや、邪魔しちゃ悪いかなと」
「お前は馬鹿か」
「な、」
「苦しいなら袖を引くなり叩くなりなんでもいいから教えるのだよ。お前が一人で我慢するのは許さないのだよ」
「は……」
「というか、俺が耐えられんのだよ」
本当に、こいつは、ああなんで、もう、
「真ちゃん、」
「何なのだよ」
「好き、超好き。ヤバい、好き!」
「……知ってるのだよ」

その仕草が、その声が、
(こんなにも俺の胸を揺さぶってくるんだ)



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