note



2014/03/15



前ジャンルのお気に入り作品のセルフリメイクを緑赤で。
赤司が死んでいるので注意、緑間の独白。







午前一時を過ぎた頃に、俺は彼の肢体を海から掬った。
正しい言い方をすれば、それは最早人の形をしていなかった。

入水というものは惨い死に方である。
一度海の底へ還った身体は膨張し、再び水面へと姿を現す。
膨れ上がった皮膚は破裂し、やがて溶かされ、海の深さに微睡んで消える。
人と呼べるものは半分ほどしか残っていない骨と申し訳程度に引っ掛かっていた腎臓くらいだった。
俺はそれを、船を揺らして、水面を弾いて、掬い上げた。
少しでも力を入れれば崩れてしまうそれを、大事に抱きかかえる。
俺はこれを彼だと、赤司だと思えた。
これが赤司だなんて保障はどこにもない。
この骨と腎臓が確信させるものなどない。
だが、紛れもなく赤司であった。
それは直感や思い込みといったものではなく、ただ真実として俺の目の前にあった。

腕に抱いた彼は背中の産毛が逆立つ程に冷たく、骨は既に溶けだしていて柔らかかった。
俺の両手はかじかんだが、それでも彼を離す気にはなれなかった。
もう二度と、俺は彼を手放すことはないのだろう。
彼が壊れてしまうので強く抱きしめることができないのを、とても残念に思った。
そっと瞼を降ろし、彼を感じる。
海に沈んだ皮膚たちは、一体どれ程の想いで膨らんで散ったのだろう。
彼の意思はまだ脊髄に残っているだろうか。あの濁った瞳は今頃海中のどこにあるだろうか。
俺がそれを知ることは不可能だが、俺は確かに今、やっと彼を理解することができた。
俺はふやけた彼に口付けて、そっと笑った。
「おかえり」
囁いた声はやはり泡になり、消えた。


13月にて、回帰
(ただいま)



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