あなたに似合うもの(狂/病/死)


※姫視点






((あなたには孤独が似合うと思うの))

はじめてあなたに会ったときに
私が言った言葉
ねぇ、覚えてる?


「愛してるよ姫」

甘く愛を囁く声

「そう…」

でもそんなことはどうでもいいの


「ねぇ、枢」

「なんだい?」

「私がはじめてあなたに会ったときに言った言葉、覚えてる?」

表情を付けない声で聞く


「“あなたには孤独が似合うと思うの”…だったかな?」

「あたり」

本当に、あなたには孤独がよく似合うと思うわ

「それがどうかしたの?」

だから、ね

「それを実行しようと思って」


私はニッコリと笑って
とある筋から買い取った
対ヴァンパイア用の銃を懐から取り出した

「なにを、言っているんだい…?」

枢の表情が歪んだ
孤独も似合うけれど
そういう表情も似合うわね


「そのままの意味よ。あなたには孤独が似合うから、だから独りにさせてあげるの」

枢とは対称的に
クスクスと笑いながらそう言って
自分の心臓付近に銃を突き付ける「枢、あなたには孤独が似合うわ」

「…姫、その銃を下ろすんだ」

怒りや悲しみ、困惑が混ざった様な声で私の名前を呼ぶ枢
嗚呼、ゾクゾクするわ


「あなたは最期を迎えるそのときまで、ひとりきりでいるの」

「姫!いい加減に…」

笑いが止まらないわ

「枢の隣に私がずっといたら、枢はそれだけで幸せになれるでしょう?」

「…っ分かっているなら、何故…!?」

「それはそれで魅力的ではあるけど、それじゃあ駄目なの」

私は笑いをひっこめて
まっすぐに枢を見つめる

「私はね、枢が大切なモノを…私を永遠に失う、その瞬間の顔が見たいの。孤独が似合うのは分かっているわ。だから次は絶望が見たいの」

だって
孤独が似合うなら絶対に絶望も似合うはずだから


「な、にを…」

歪む表情
キレイだわ

「私はきっと、枢のいろんな表情を見るために生まれてきたと思うの。幸せな表情はもう充分よ。だから、ね」


─カチャ

安全装置を外し引金に指をかける

「次は絶望を見せて…?」

「やめ…」


─バァン
痛みが走る感覚すらなかった

崩れ落ちる瞬間に
枢の顔が見えた


ほら、やっぱり絶望も似合うわ

大好きよ、枢


声が音になることはなく
私は幸せな気分のまま
意識を手離した




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