鏡像段階論


同じ部活の食満留三郎は、俺の恋人だ。

とにかく考えてる事が一緒で、人に言わせると俺たちはどこか似通っているのだそうだ。だから、二人で一人だ、と言われ付き合い始めた。

だがしかし、奴となんだ…らぶらぶ、ってのにならなんだ。喧嘩ばっかで、最近はもうろくに顔も見てないんだ。

とうとう俺は、痺れを切らして廊下を通る奴を捕まえて、便所に引きずり込んだ。

「よお 目付きの悪い奴」

「なんだよ顔付きの悪い奴」

食満は少し驚いた後に相手が俺だと解るとダルそうに首を横に向けながら言い返した

なんだって
ああ言えばこう言う
悪いところをつつきあう
拉致があかない

その態度が事態を悪化させるとも知らずに、だ。

「俺の顔を見ろよ」

俺はなぶる様に言った

「怖いんだろ。向き合うのが」

食満は怪訝そうに片眉を上げながらこっちに向き直った。

「俺とお前は似てるからな。」
「…はぁ?」

急な話の転換に食満は疑問符を打つ。

それでも整った顔立ち、すっと通った鼻筋は、かぶり付きたくなるほど綺麗だ。凛とした切れ長の目は、どこを探したって俺には見当たらない。ただ、内容が、中身が似ていた。言い様の無い似方だった。
食満は呆れたように肩を竦める。
俺はそれで確信した。

「お前は、お前自身と向き合うのが怖いんだ。」

食満の左胸を指差す

「怖いだろ。自分が言うこと聞かなくなるのは。壊れていくのを目の前で見なくちゃならないのは。」

俺は、お前なんだよって教えたいだけだった。

「なんだよ。怖くねえし、お前と俺は違うだろ。」

「違くねえよ」

「ちげぇよ」

「違くねえよ!」

「ちげぇよ!お前、日本語も変だぞ!」

「違くねえ!俺とお前は似てんだよ!だから嫌いになったり、すっ、」

す。

好きに、

なったり

「……するんだろっ」

顔、熱っ!
照れて言えなかった。

「ははぁ。なるほどな。」

食満は俺を男子便器に追い立て顔を近づけた。

「いたっ…何すっ…」

「じゃあ別れるか。」





「…は、何言って」

「そんなに俺の事嫌いなら別れようっつってんの。フツーじゃん。周りも結構そうゆう奴いるよ」

そうじゃなくて

別れるとかじゃなくて

「お前…」

俺は声を絞り出した。

「ばっ…かじゃねーの!周りの奴等が別れてるから自分も別れるのかよ!」

「ちげぇってお前が俺の事嫌いなら別れようって話だろ!」

「なんでそうなるんだよ!」

「それはこっちの台詞だ!」

食満は吠える俺を宥めるわけでなく、単純に自分の気持ちを俺にぶつけていた。
少しお互いにぐっと言葉を圧し殺してから、ゆっくりと食満が口を開けた。

「お前、…俺の事そんなに嫌いかよ。何処が嫌いなんだよ。向き合うとか似てる似てないとか、そんなん関係ねぇよ。好きか嫌いかって話だろ?」

顔面はしゃんとしていたが、食満の言葉がしゅんと縮こまっていたのに気付いた。
嫌われている、その考え一つが、食満を大きく動揺させていたらしい。

「き…嫌いじゃねぇよ」

なるべく感情的にならないように言葉を吐く。食満がそれを聞いて、はっと俯いていた顔を上げた。
それに気付きあわてて言葉を紡ぐ。

「す、好きでもねぇけど」

小さく呟き拗ねたように口を尖らせると、可笑しかったのか食満が少し笑った。

軽く食満は俺の唇に接吻する。

「なんなんだよ…」

「気に入らねえんだよ」

ぎっと睨みながら俺は途切れ途切れにぼやく。



「けっ喧嘩ばっかで、ロクに顔合わせなくって」

「似てるから…なんだろうけど」

「俺とお前が」

「だから」

「ちゃんと」





向き合って欲しくて





「すっ…すっ、すっ、す好きだから////」




見て欲しくて




俺なんか見るところない野郎だけれど




けど




好き合っていたいから




切ないのは痛いから




俺はお前を見る





お前は俺を見て








,
゜.・。:+.゜.・。..゜.・。.+゜.゜.・

9/25(Sun)
8:27

自画像一壁だった

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