伏+尊→雑@

 
何故組頭の身辺の世話までもが自分の仕事内容に組み込まれているのか疑問を抱く余裕もなく、洗濯籠に入った組頭の装束を届けるついでに部屋も掃除するべく障子を開けたら子供が部屋の真ん中に鎮座していた。
 
 
「………………………」
 
「……?……………」
 
子供が忍術学園の制服を着ていることと、何となく幸の薄そうな顔つきであるからして恐らく保健委員の子であろうことは見て取れた。私が観察している間、子供は無反応の私を訝しげに目を細めて見据えはするものの目立った反応は見せず、事の発展に貢献する気は無さそうだった。どうしてくれよう、これ。
何故ここにいるのか聞こうとしたが、十中八九組頭が関与していることは真実であるだろうし、そうなれば私がいくらこの子を退かそうと試みようとも他の隊員に言い付けようとも組頭が良しとすることを変える力には成り得ない。よって今私がすべきことは、任務の続行である。と割り切って子供は見なかったことにした。
部屋に入り、持っていた籠を置いて中身を畳み始める。これが終わったら部屋を一通り拭き掃除して、布団を干して、包帯と茶菓子の補充をして、ゴミを捨てて、散乱している本を棚に戻して…なんだか自分の肩書きが本当に忍者であるか不安になってきた。将来の行く末を按じながらちんたら手を動かしていたら、子供が立て膝で寄ってきて籠の中身を覗いた。一枚上着を取り出して、大きさを確かめるように袖を通して羽織った。予想通りぶかぶかだったのが面白かったので私が悪のりして組頭の頭巾を巻いてあげたら喜ばれた。終始言葉は交わさなかったが逆にそれが楽しくて、私は補充用に持ってきていた包帯を組頭のように顔に巻き、小さい組頭を作った。子供は腕を振って喜んでいた。何をしているんだ、私は。
 
 
「何してんの、君達」
 
 
今まさに胸を過った台詞を背後から言われ心臓が萎縮した。振り向いたら組頭が脇に何か箱を抱えて立っていた。
 
「…組頭どこ行ってたんですか?」
 
貴方がいなかったせいでつい子供と遊んでしまったじゃないですか。楽しんでいた分際なので文句は言えないが。
 
「殿が蜜柑を大量買いしていたから一箱掻っ払ってきた」
 
「…密告しないであげますから一つ下さい」
 
この上司は全くもって油断も隙も常識も無い。組頭は素直に蜜柑を三つほど取り出して渡してくれた。
 
「…で、君は何をしているの?」
 
子供に向かって組頭は尋ねた。子供に、尋ねた。
………え、組頭が連れて来たんじゃなかったんですか。
 
「こなもんさんの格好をさせてもらってました〜」
 
子供は腕をぶんすか振りながら嬉々として答える。


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