現パロ皆川@

※アミダCP




「失礼しまー…あれ?」
 
保健室の戸を恐る恐る開けたが、そこには僕が予想していた人物ではない人がいた。
 
「川西先輩…?」
 
「…なんだ、怪我か」
 
包帯だらけの不気味極まりない陰険教師ではなく、勉強道具の広がった机に頬杖をついて携帯をいじっている一つ上の先輩だった。こちらを見るなりつっけんどんに言って一睨みしてきたが、僕はこの人が言動ほど冷たい人ではないことを知っている。
 
「ちょっと擦ったとこが痛いんで絆創膏もらえないかと…」
 
「…ちっ…ったく…おら、見せてみろ」
 
いわゆるこの人は典型的なツンデレというやつで、なんだかんだ言いつつも面倒を見てくれる。先輩が戸棚から消毒液やなんかを出している間、僕は道着の腕を捲って椅子に座った。
 
「そういえば…先輩なんでいるんですか?高三はもう週一登校のはずなのに…」
 
「…家よりここのが静かに勉強できんだよ」
 
先輩は面倒くさそうに言い放ち、僕の腕を冷たい手で触った。
 
「ぅわっ冷たっ!!」
 
「あ、わり…てかお前これ擦ったどころじゃねーよ、どうやったらこんな皮膚抉れるんだよ」
 
「抉れるって…ただちょっと擦っただけですよ、そんな大したこと…」
 
「バカ!擦り傷だからって甘くみんなよ、取り敢えずそこで血を洗って来い!」
 
思い切り肩を叩かれて水道に誘導された。僕は傷より痛くなった肩を撫でながら蛇口を捻る。保健委員のくせに手荒いとはいかがなものかと思うが…いや今更か。木枯らしの吹く窓の外をぼんやり見ながら、何となく口を動かす。
 
「勉強なら図書室の方がいいんじゃないですか?」
 
「あそこは一人になれん」
 
「…いや、ここも似たようなもんでしょ」
 
「ここは訪問者をさっさと帰せばいいだけだ」
 
「…さいですか」
 
ははっと渇いた笑いを浮かべながら水を止める。遠回しに、お前もさっさと出ていけって言われた気がしたなぁ。再度椅子に座ったら先輩がティッシュで水気を拭いてくれた。女みたいに細い指が自分の腕を掴んでいるところをみると、何故だか落ち着かない気になった。誤魔化すようにまた口を動かす。
 
「せ、先輩は一人でないと勉強できないタイプなんですね」
 
「誰だってそうだろ…」
 
当たり前だと言うように呆れ顔された。僕は結構テレビが点いてても友達がいても平気なんだけどなぁ。しかし先輩は眉間に皴を寄せていた。
 
「…なのに家じゃ四六時中、弟妹が騒いでるし…図書室には久作がいてなんかずっと話し掛けられるし…四郎兵衛ん家はあいつずっと質問してくるから集中できないし…三郎治は一緒にいると恐いから嫌だし…」
 
ここしかねーんだ、と言って先輩はため息をついた。そう言えば前に伊助が、池田先輩が委員会中ずっと川西先輩のことしか話さなくて心底うざかったって言ってたな。大丈夫なのか。
 



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